フランシス・ウィートリー

フランシス・ウィートリー（1747年 - 1801年）は、18世紀後半のイギリスで活躍した画家です。肖像画と風景画を得意とし、当時のイギリス社会の様子を生き生きと描き出しました。彼の作品は、その繊細な筆致と温かみのある色彩が特徴で、多くの人々に愛されています。

生い立ちと初期のキャリア

ウィートリーはロンドンのコヴェント・ガーデンで仕立て屋の息子として生まれました。幼い頃から絵画に興味を持ち、ウィリアム・シプリーの絵画学校で学び始めました。その後、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの美術学校に進み、正式な美術教育を受けました。美術振興協会から数々の賞を受賞するなど、その才能は早くから認められていました。

また、当時人気画家であったジョン・ハミルトン・モーティマーの助手として、メルバーン子爵の邸宅であるBrocket Hallの天井画制作にも携わりました。この経験は、彼の後の画業に大きな影響を与えたと考えられています。

画家としての活動

1778年、ウィートリーはロイヤル・アカデミーの展覧会に初めて出展し、その才能が広く知られるようになりました。しかし、私生活では放蕩生活を送り、借金に追われる日々を送っていました。その結果、友人の画家ジョン・アレクサンダー・グレッセの配偶者とアイルランドへ駆け落ちするというスキャンダルも起こしました。ダブリンでは政治家の肖像画を描くなど人気を集めましたが、素性が知られるとロンドンに戻らざるを得なくなりました。

ロンドンに戻ったウィートリーは、フランスの肖像画家ジャン＝バティスト・グルーズの影響を受け、小型の肖像画や風俗画を手がけるようになります。これらの作品は版画として複製され、広く流通したことで、彼の人気はさらに高まりました。

1790年にはロイヤル・アカデミーの準会員に、翌年には正会員に選ばれ、画家としての地位を確立しました。彼の作品は、当時の人々の生活や風俗を生き生きと描き出し、歴史的資料としても高く評価されています。

私生活と晩年

1787年、ウィートリーは自身の絵画のモデルを務めていたクララ・マリア・リーと結婚しました。クララもまた画家としての才能を持ち、後に花などを描く画家として知られることになります。二人の間には4人の子供が生まれましたが、ウィートリーは1801年に亡くなりました。その後、クララは俳優のアレクサンダー・ポープと再婚し、クララ・ポープとして活躍しました。

主要な作品

ウィートリーの代表作として最も有名なのは、オーストラリアの初代提督アーサー・フィリップの肖像画です。この作品は、オーストラリアの歴史教科書にも掲載されるなど、歴史的に重要な作品として知られています。

この他にも、ウィートリーは多くの肖像画や風俗画、風景画を制作し、当時のイギリス社会の様子を後世に伝える貴重な資料となっています。彼の作品は、現在でも世界中の美術館や個人コレクターによって大切に保管され、多くの人々を魅了し続けています。

フランシス・ウィートリーの生涯は、波乱に満ちたものでしたが、その芸術的才能は確かなものでした。彼の作品は、18世紀イギリスの美術史において、重要な位置を占めています。

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