フランシス・ベラミー

フランシス・ベラミー：忠誠の誓いを起草した牧師の生涯

フランシス・ジュリアス・ベラミー（Francis Julius Bellamy、1855年5月18日 - 1931年8月28日）は、アメリカのバプテスト派牧師であり、キリスト教社会主義者、著述家として知られています。彼は、1892年にアメリカの忠誠の誓いを起草したことで最も有名であり、また、その誓いを唱える際に行われた「ベラミー式敬礼」にもその名を残しています。彼の生涯は、宗教的な活動、社会改革への情熱、そして広告業界でのキャリアといった、多様な側面を持っています。

若年期と宗教活動

ベラミーは1855年、ニューヨーク州マウントモリスで生まれました。父は聖職者であり、ベラミー家はバプテスト派に深く関わっていました。幼少期に家族でニューヨーク州ロームに引っ越し、そこで彼はバプテスト教会の活動に積極的に参加します。ロチェスター大学で神学を学んだ後、若くしてバプテスト教会の牧師に叙任されました。ベラミーは1830年代の第二次大覚醒の影響を強く受け、バプテスト派の教えを広めるために各地を旅し、地域社会への奉仕に尽力しました。

忠誠の誓いの起草

1891年、ベラミーは子供向け雑誌『ユースズ・コンパニオン』の販促部門で働くことになります。同誌は以前から、学校に国旗を販売するキャンペーンを行っており、ベラミーはこれを全米の公立学校に国旗を設置する「校舎旗運動」に発展させようとしました。1892年、コロンブスのアメリカ大陸到達400周年を記念し、同誌は全米の学校で記念式典を行うことを提唱しました。その際、国旗に対する忠誠を誓う文言が必要となり、ベラミーがその起草を担当しました。

ベラミーが起草したオリジナルの誓いの言葉は、「我は、我が国旗と、それが象徴する共和国に忠誠を誓う。それは、すべての人々に自由と正義をもたらす、不可分な一つの国家である」というものでした。この誓いの言葉は、全米の学校で広く唱えられるようになり、アメリカの愛国心の象徴となりました。式典では、ベラミーが考案した国旗への敬礼が行われ、これは「ベラミー式敬礼」として知られるようになります。しかし、この敬礼は後にナチス式敬礼と酷似していることから、胸の前に手を置くポーズに変更されました。また、ベラミーは「絶対的な政教分離」を信じていたため、宣誓文には「神」という文言は含まれていませんでした。

キリスト教社会主義者としての側面

ベラミーはキリスト教社会主義者でもあり、労働者の権利と経済的資源の平等な分配を主張しました。彼はイエスの教えにその根拠を見出し、資本主義の弊害を批判しました。1891年には、その思想が原因で教壇から追放されたこともあります。彼はイエスを社会主義者として捉えようとしたため、聖職者としてのキャリアは終わりを迎えました。現代では、ベラミーはアメリカにおける初期の民主社会主義者として認識されています。

彼は公教育運動、国有化運動、キリスト教社会主義運動の指導者としても活躍し、草の根ネットワークを組織し、社会変革を目指しました。フランスの哲学者アンリ・ド・サン＝シモンの影響を受け、国有化と公教育が社会問題の解決策であると考えていました。また、ボストンでキリスト教社会主義者協会を共同設立し、新聞の発刊にも関わりました。

晩年と死

ベラミーはニューヨークで19年間広告業界で働いた後、フロリダ州タンパに移り住みました。晩年はタンパ電力会社やタンパガス会社で広告マネージャーとして働き、1931年に76歳で亡くなりました。彼の遺体は火葬され、遺骨は故郷のニューヨーク州ロームに埋葬されました。

私生活

ベラミーは1881年にハリエット・ベントンと結婚し、3人の息子をもうけましたが、ハリエットは1918年に亡くなりました。1920年にはマリー・モリンと再婚しています。また、彼のいとこであるエドワード・ベラミーは、ユートピア小説『顧みれば』で知られる作家です。

まとめ

フランシス・ベラミーは、バプテスト派の牧師、キリスト教社会主義者、そして忠誠の誓いを起草した人物として、多岐にわたる足跡を残しました。彼の生涯は、宗教的信念、社会改革への情熱、そしてアメリカの歴史における重要な瞬間が交錯する、複雑で魅力的な物語を形作っています。

ベラミーの思想や活動は、アメリカ社会における愛国心、宗教、社会主義の議論に大きな影響を与え、現代にもその遺産は引き継がれています。

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