フランシス・ホークスビー

フランシス・ホークスビー（Francis Hauksbee, 1660年 - 1713年）は、17世紀後半から18世紀初頭にかけてのイギリスを代表する技術者であり、物理学者です。彼は、王立協会での活動を通じて、特に電磁気学の分野で重要な功績を残しました。同名の甥であるフランシス・ホークスビー（Francis Hauksbee the Younger, 1687年 - 1763年）と区別するために、しばしば「フランシス・ホークスビー（大）」、すなわちFrancis Hauksbee the Elderと表記されることがあります。

ホークスビーは生地屋の息子として生まれ、1660年5月27日にエセックスのコルチェスターで洗礼を受けました。1678年には兄の生地屋で見習いとして働いていましたが、後にアイザック・ニュートンの実験室で助手として働くことになります。1703年、ニュートンが王立協会の会長に就任すると、ホークスビーは王立協会の学芸員および装置組立技術者として迎えられました。この役職において、彼はロバート・フックがかつて行っていた王立協会の公開実験を再開し、実験実演者として活躍しました。

当初、日常的な真空実験に従事していたホークスビーは、1705年頃から真空放電実験へと研究の焦点を移しました。彼は、オットー・フォン・ゲーリケが開発した摩擦式起電機を改良し、中空のガラス球の中心に電極を設けて帯電させる実験に取り組みました。実験の結果、ガラス球に触れると放電が起こること、そして低圧にしたガラス球に少量の水銀を入れると非常に明るい放電が得られることを発見しました。この発見は、後の水銀灯などの実用化につながる重要なものでした。これらの功績が認められ、1706年には王立協会のフェローに選出されました。

ホークスビーの研究成果は、1706年と1707年に『フィロソフィカル・トランザクションズ』に論文として発表されたほか、1709年には著書『光と電気に関する様々な主題についての物理機械実験（Physico-Mechanical Experiments on Various Subjects touching light and electricity）』として出版されました。この著書は、彼の実験と理論に関する詳細な記述をまとめたものであり、当時の科学界に大きな影響を与えました。

さらに、王立協会は創立350周年を迎えた2010年に、科学、技術、数学分野における「知られざる英雄」たちを表彰するため、ホークスビー賞（Hauksbee Awards）を設立しました。この賞は、ホークスビーの功績を称えるとともに、現代の科学技術の発展に貢献する人々の業績を広く認知するためのものです。ホークスビーの先駆的な研究は、後世の科学者や技術者に大きな影響を与え続け、彼の名は科学史に深く刻まれています。

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