フランソワ・リギョール

フランソワ・アルフレ・デジレ・リギョール

フランソワ・アルフレ・デジレ・リギョール（François-Alfred-Désiré Ligneul、1847年9月1日 - 1922年7月25日）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したフランスのカトリック神父です。パリ外国宣教会に所属し、明治時代に来日。32年間にわたり日本に滞在し、教育者、著述家、論争家として日本のカトリック教会に大きな影響を与えました。

生涯

1847年、リギョールはフランスのパリ近郊、シャルトル司教区の裕福な農家に生まれました。幼少期から聖職者を志し、サン・シェロンの小神学校、シャルトルの大神学校で学びました。1871年（明治4年）に司祭に叙階されると、母校の小神学校でラテン語教師として8年間教鞭をとりました。

1879年（明治12年）、リギョールはパリ外国宣教会に入会し、翌1880年（明治13年）に来日。来日後数ヶ月日本語を習得し、東京築地の神学校校長に就任しました。また、サン・モール会の修道院付き司祭としても活動しました。当時の教会が京橋小田原町に設けた低所得者向けの病室や、目黒のハンセン病病院を定期的に訪問し、患者のケアにも尽力しました。

1889年（明治22年）から5年間、週刊雑誌『天主の番兵』を発行し、カトリックの教えを広めました。1893年（明治26年）には、東京帝国大学教授の井上哲次郎によるキリスト教排斥論に対し、『宗教と国家』を著して反論しましたが、内務省により発禁処分を受けています。1894年（明治27年）からは雑誌『聲』の編集長を務め、その傍ら、『理想の青年』『教育哲学』など、哲学、神学、歴史に関する数十冊の単行本を約15年にわたり刊行しました。

1898年（明治31年）には、帝国教育協会の要請を受け、東京市の学校長会で約10回の講演を行いました。1906年（明治39年）から6年間は、宣教師や修道女を対象とした黙想指導にもあたりました。

1912年（明治45年）、リギョールは香港のナザレトの家に隠退し、司牧活動の傍ら、日本語による著作を発表し続けました。1922年（大正7年）7月25日、香港にて死去。香港にあるパリ外国宣教会経営のベタニア療養所の墓地に埋葬されました。

著書

リギョールは、日本語で多数の著作を刊行しました。以下はその一部です。

金書 一名・謙遜乃道引 (1888年)
愛國の真理 一名・闢妄正義 (1896年)
事蹟以前以後之歴史 (1896年, 1908年)
哲學論綱 (1897年)
國家盛衰之原理 (1897年)
希露離敎論 (1897年)
警世時論 (1898年)
學理無能論 (1898年)
理想の靑年 (1898年, 1901年)
古事新論 (1899年)
処世哲學 (1900年)
敎育哲學講義 (1902年)
四ツ目屋事件と現今の學説 (1902年)
神學綱要 (1904年-1908年、多数)
革命の準備 (1906年)
トラピスト (1909年)
ジヤンダーク (1910年)
トラピストの精神 (1912年)
人物の修養 (1915年)
消星者 (1916年)
スコラ哲學論綱 (1917年)
實踐哲學 (1918年)
* 世界の新主權者 一名・新らしき神 (1923年)

リギョールの著作は、神学、哲学、教育、歴史など多岐にわたり、当時の日本の知識層に大きな影響を与えました。彼の活動は、日本のカトリック教会の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

もう一度検索