フランチェスコ・サルヴィアーティ

フランチェスコ・サルヴィアーティ（Francesco Salviati、1510年 - 1563年）は、本名をフランチェスコ・デ・ロッシ（Francesco de' Rossi）といい、ルネサンス後期、マニエリスムの時代に活躍したイタリアの画家です。枢機卿ジョヴァンニ・サルヴィアーティの庇護を受けたことから、「イル・サルヴィアーティ（Il Salviati）」または「チェッキーノ・デル・サルヴィアーティ（Cecchino del Salviati）」として知られています。彼は、ローマ、フィレンツェ、ボローニャ、ヴェネツィアといった主要都市で、装飾画や肖像画など、幅広いジャンルの作品を手がけました。

生い立ちと修業時代

サルヴィアーティは、フィレンツェの織物業者の息子として生まれました。幼少期から絵画の才能を示し、ジュリアーノ・ブジャルディーニやバッチョ・バンディネッリといったフィレンツェの画家たちに師事しました。1529年または1530年頃には、アンドレア・デル・サルトの工房で修行を終え、画家としての基礎を築きました。

1531年、サルヴィアーティは、当時の多くの画家たちと同様に、ローマ劫掠後の復興事業に参加するため、ローマへと移りました。ローマでは、フィレンツェでの修行時代を共に過ごしたジョルジョ・ヴァザーリと再会し、生涯にわたる友情を育みました。ローマ滞在中、ミケランジェロ、ラファエロ、ジュリオ・ロマーノといった巨匠たちの作品に触れ、自身の絵画スタイルを確立する上で大きな影響を受けました。

パトロンと各地での活動

サルヴィアーティは、フィレンツェ出身の枢機卿ジョヴァンニ・サルヴィアーティからの注文を受けるようになり、サルヴィアーティ宮殿の装飾画を手がけました。この縁から、パトロンの姓を名乗るようになり、通称として「サルヴィアーティ」を用いるようになりました。その後、ヴェネツィア、ボローニャ、フィレンツェといったイタリア各地を旅し、宮殿、教会、修道院などの装飾画を制作しました。

作品の特徴と代表作

サルヴィアーティの作品は、マニエリスム特有の技巧的な表現と、繊細で優美な人物描写が特徴です。彼は、巨匠たちの影響を受けつつも、独自のスタイルを追求し、複雑な構図や鮮やかな色彩を駆使して、ダイナミックで華やかな画面を作り上げました。ローマのサッケッティ宮殿やサンタ・マリア・デッラニマ教会の装飾画は、彼の代表作として知られています。これらの作品には、古代ローマのモティーフや神話的な要素が取り入れられ、彼の博識さを示すとともに、見る者を魅了します。

サルヴィアーティの画業を支えたもの

サルヴィアーティの才能を育んだのは、フィレンツェでの確かな基礎と、ローマでの巨匠たちの作品との出会いでした。そして、彼を経済的に支え、才能を開花させたのは、枢機卿ジョヴァンニ・サルヴィアーティをはじめとするパトロンたちの存在でした。彼は、パトロンからの依頼に応え、各地を旅しながら、その才能を余すところなく発揮しました。

まとめ

フランチェスコ・サルヴィアーティは、マニエリスムの時代を代表する画家の一人であり、その作品は、繊細で優美な表現と、複雑でダイナミックな構図によって、見る者を魅了します。彼の画業は、ルネサンスからマニエリスムへと移り変わる時代の美術を理解する上で、重要な要素となっています。

参考文献

Giorgio Vasari: Das Leben des Francesco Salviati und des Cristofano Gherardi. Komm. u. eingel. von Sabine Feser. Berlin 2009. (Aus: Vasari, Le vite).
Francesco Salviati ou la Bella Maniera. Hrsg. von Cathérine Monbeig Goguel. Ausstellungskat. Louvre, Paris 1998.
* Iris Hofmeister Cheney: Francesco Salviati (1510–1563). 4 Bde. Ph.D. thesis New York, New York University, Faculty of the Graduate School of Arts and Science, Department of Fine Arts 1963.

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