フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニ

フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニ：多才なルネサンスの巨匠

フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニ（1439年9月23日 - 1501年11月29日）は、イタリア初期ルネサンス期において、その多岐にわたる才能を発揮した人物です。彼は、彫刻家、画家としての活動に加え、建築家、建築理論家、そして軍事技術者としても名を馳せました。特に、建築理論家としての彼の功績は大きく、後世の建築家や芸術家たちに多大な影響を与えました。

生涯

マルティーニは、シエナで家禽商人の子として生を受けました。若い頃は彫刻家、画家としての修行を積みました。1477年頃には、当時の文化の中心地であったウルビーノに移り住み、軍事技術者としてフェデリコ・ダ・モンテフェルトロに仕えました。ウルビーノは、ドゥカーレ宮殿やヨーロッパ有数の蔵書を誇る図書館など、文化的にも非常に豊かな都市でした。

マルティーニは、軍事技術者として、また構造設計者としても高い評価を得ていました。1490年には、ミラノ公ジャン・ガレアツォ・スフォルツァに招かれ、ミラノ大聖堂のティブリオ（十字型通路の交差部分の天井の塔）問題の解決に尽力しました。この難題には、レオナルド・ダ・ヴィンチやブラマンテも関わっており、レオナルドは柱の配置による荷重分散の案を提示しましたが採用には至りませんでした。最終的に、マルティーニがレオナルドの案を参考にしつつ、解決策を見出しました。

また、同年6月には、ルドヴィーゴ・スフォルツァによってレオナルドと共にパヴィーアに呼び出されています。この時の詳細は不明ですが、パヴィーア大聖堂の平面形式変更に関する意見を求められたのではないかと推測されています。

絵画作品

マルティーニは、絵画作品も残しており、代表的なものとして以下があります。

聖母戴冠（1472年、シエナ国立美術館）
生誕（1490年、シエナ、サン・ドメニコ聖堂）

建築論、作品

マルティーニの最も重要な功績の一つは、1482年に著した『市民建築および軍事建築に関する理論書』です。この理論書は写本として広く流布し、ルネサンス期の建築思想に大きな影響を与えました。レオナルド・ダ・ヴィンチもこの著作を所有しており、書き込みがあったことから、レオナルドの建築に関する思想に影響を与えたと考えられています。レオナルドが所有していた116冊の書物の中で、唯一現存している書物です。

実作としては、ウルビーノのパラッツォ・ドゥカーレの建設に関わったとされていますが、具体的にどの部分を設計したかについては議論が分かれています。その他、ミラノ大聖堂のティブリオ（最終設計）や、コルトーナのサンタ・マリア・デル・カルチナーイオ教会堂を設計しました。

マルティーニは、多岐にわたる分野で才能を発揮し、ルネサンス文化の発展に大きく貢献した人物です。彼の残した建築理論や作品は、今日においても高く評価されています。

もう一度検索