フランチェスコ・ラナ・デ・テルツィ

フランチェスコ・ラナ・デ・テルツィの業績

フランチェスコ・ラナ・デ・テルツィ（1631年 - 1687年）は、イタリア北部ブレシア出身のカトリック司祭であり、発明家としても知られています。彼は、イエズス会の一員として宗教的な活動を行う一方で、科学や技術の分野にも革新的なアイデアをもたらしました。中でも、彼が提唱した「空気より軽い航空機」の概念は、航空技術の発展に大きな影響を与えたとされています。さらに、点字の先駆者としても知られており、視覚障害者のための新たなコミュニケーション方法を模索しました。

空中船の構想

1670年、ラナ・デ・テルツィは「草案段階にある幾つかの新発明に関する問題または小論」という書を出版し、その中で「空飛ぶ船」のアイデアを紹介しました。この構想は、物理学者トリチェリによる真空の発見や、オットー・フォン・ゲーリケによるマクデブルクの半球実験の影響を受けてます。彼の提案する空中船は、木製の船体を持ち、中心に大きなマストが設けられ、そこには帆がつけられます。操縦は通常の帆船と同様に行われる予定でした。

さらに、船体には四つの薄い銅製の球殻が取り付けられており、直径はそれぞれ7.5メートルでした。ラナの計算によれば、各球体は180kgの重さを持ったものの、290kgの浮力を得ることができるとされていました。この浮力を利用して、最大6人の乗員を支えることが可能になる筈でした。しかし、当時の技術では必要な厚さの銅製球殻を製造することは困難であり、結局ラナ・デ・テルツィの理想とした空中船の実現には至りませんでした。

加えて、ラナはこの空中船について軍事利用の可能性にも言及しており、将来的な空襲の可能性についても言及しています。彼の空中船の模型は現在、ワシントンのスミソニアン博物館に展示されています。

点字の先駆け

彼の著作『小論』には、「盲人のための独習可能な記法、あるいは秘密を隠すための暗号」という章があり、ここでラナは未来に点字として知られる記法の基本コンセプトを展開しています。このシステムは、ラテン・アルファベットを3つ以内の点と3本以内の線の組み合わせで表現するというもので、視覚的な情報を触覚的に読み取る手段を提供しようとするものでした。彼の考案した記法は、厚紙に浮き彫りにされ、指で読むことができる形で設計されています。

理論的制約と影響

しかし、1710年には、数学者ゴットフリート・ライプニッツが物理的にこの真空飛行船が成立不可能であることを明らかにしました。彼は、真空に耐えうる薄い球殻が製造できた場合でも、その球殻は大気圧に屈してしまうことを指摘したのです。こうして、ラナ・デ・テルツィの空中船の夢は理想のみにとどまりましたが、彼の革新的なアイデアは後の科学の発展に多大な影響を与えました。

著作

ラナの主要著作には、次のようなものがあります。1670年に出版された『Prodromo ovvero saggio di alcune invenzione nuove premesso all'arte Maestra』では、自然哲学の原理が多様な発明と実験にどのように適用されるのかを考察し、1684年から1686年にかけて発表された『Magisterium naturae et artis, opus physicale matematicum』もまた、彼の科学的な探求を示すすばらしい作品です。これらの著作を通じて、ラナ・デ・テルツィは科学と技術の進展に寄与し続けました。

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