フランチェスコ・ルジェッリ

フランチェスコ・ルジェッリ（1630年 - 1698年）は、イタリアが誇る弦楽器製作の中心地、クレモナで活躍したヴァイオリン製作者です。彼は特に、高名なニコロ・アマティの工房で最も信頼された弟子の一人でした。

概要

ルジェッリは、同じくアマティに学んだアンドレア・グァルネリとは同門の間柄にあたります。ルジェッリ家は、クレモナ市街の城壁外、サンベルナルドやサンセバスティアーノの教区に居を構えていました。長年にわたりアマティの工房で研鑽を積んだため、彼の作品は師であるアマティの様式に非常に近い特徴を持っています。弦楽器製作の世界では珍しいことではありませんが、ルジェッリが製作した楽器にアマティのラベルが貼られて販売されたケースがあり、これが訴訟に発展したこともありました。当時、アマティ本人が手がけた新作楽器は、ルジェッリの新作楽器のおよそ3倍もの高値で取引されていたため、偽装が行われた背景には経済的な動機があったと考えられます。この訴訟の結末は明らかになっていませんが、ルジェッリがアマティの工房を陰ながら、そして長きにわたって支えていた事実は揺るぎないものです。

チェロ製作への貢献

ルジェッリはヴァイオリンやヴィオラも製作しましたが、特にチェロの分野でその功績は高く評価されています。彼は従来のチェロよりも小ぶりで扱いやすい形状のスタイルを確立し、その革新性が注目されました。この新しいチェロの形状は、後にアントニオ・ストラディバリやジュゼッペ・ガルネリといった、クレモナを代表する他の偉大な製作家たちも模倣することになります。今日に至るまで、ルジェッリが生み出したチェロの形状は「ルジェッリモデル」として知られ、現代の弦楽器製作者たちにとっても研究や製作の範となる存在です。

主な使用者

フランチェスコ・ルジェッリが製作した楽器は、現在も多くの著名な音楽家によって使用されています。以下にその一例を挙げます。

チー・ユン：1669年製ヴァイオリン（自身が所有し、キャリア初期に使用）
Astrig Siranossian：1676年製チェロ
フェデリコ・アゴスティーニ：1678年製ヴァイオリン
ジョヴァンニ・ソッリマ：1679年製チェロ
Håkon Samuelsen：1687年製チェロ
マーティン・スタンツェライト：1691年製チェロ
Lauri Rantamoijanen：1693年製チェロ

弟子たち

フランチェスコ・ルジェッリには4人の弟子がいました。そのうちの3人は彼の息子たちであり、もう1人は孫でした。しかしながら、フランチェスコの死後に弦楽器製作者として最も成功を収めたのは、三男のヴィンチェンツォ・ルジェッリ（Vincenzo Ruggieri、1663-1719）ただ一人でした。ヴィンチェンツォは27歳で独立し、クレモナの城壁のすぐ近くに自身の工房を構えました。彼の製作した楽器にも、父フランチェスコから受け継いだアマティ派の伝統的な製作技法の影響が見られます。

その他の弟子たちの状況は以下の通りです。

Giovanni Battista Ruggieri（1653-1711）：フランチェスコの長男です。彼の製作した楽器は比較的少ないですが、現存するものもいくつかあります。これらの楽器は、父の優れた技術をよく受け継いだ美しい仕上がりを見せていますが、特筆すべき新たな発展は見られないとされています。ただし、一部のチェロにおいては、新しいアーチの試みや幅広のスクロールなど、変化が観察されます。
Giacinto Ruggieri（1661-1697）：フランチェスコの二男です。彼が製作した楽器もわずかしか残されていません。ジャチントの楽器は、ルジェッリ家の中で製作された他の楽器と比較して、より繊細でやや細身の傾向があると言われています。
Antonio Ruggieri：フランチェスコの孫にあたり、二男ジャチントの息子です。彼が製作した楽器で現在確認できるものはほとんどありません。

このように、フランチェスコ・ルジェッリとその工房は、特にチェロの分野において革新的な足跡を残し、クレモナの弦楽器製作史において重要な位置を占めています。

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