フランツ・ウェルザー＝メスト

フランツ・ウェルザー＝メスト：オーストリアの指揮者

フランツ・ウェルザー＝メスト（Franz Welser-Möst）は、1960年8月16日にオーストリアのリンツに生まれた著名な指揮者です。彼は、音楽界での活動だけでなく、その独自の履歴からも多くの人々の注目を集めています。彼の家族は音楽に対する関心が強く、曾祖父はヨハン・シュトラウス2世のデビューコンサートを開催したカフェの経営者でした。

音楽教育と指揮者への転向

ウェルザー＝メストは14歳で地元の音楽高校に入学し、作曲家バルドゥイン・ズルツァーの指導を受けて音楽の基礎を学びました。当初、彼はヴァイオリニストとしての道を志していましたが、1978年に交通事故に遭遇し、背骨を3ヶ所も折る重傷を負ってしまったため、奏者としての道を断念せざるを得なくなりました。この出来事を契機に、彼は指揮者としてのキャリアを目指すことになり、ミュンヘン音楽大学でヘルマン・ミヒャエルから指揮法を学びました。

特に1979年には、カラヤン国際指揮者コンクールに参加し、最年少のセミ・ファイナリストとして注目を集めました。この経験が彼の指揮者としての活動の出発点となりました。

指揮者としての成長

ウェルザー＝メストは、彼の故郷リンツを含むオーストリアのユースオーケストラを指導しながら、経験を積んでいきました。彼に声をかけたアンドレアス・フォン・ベニヒセン男爵は彼のマネージャーとなり、1985年には養子縁組を結びました。この頃から彼はフランツ・ウェルザー＝メストという名前を名乗るようになり、国際的なキャリアが始まります。

指揮者としてのキャリアをさらに積む中、1986年にはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮し、モーツァルトのレクイエムを演奏して絶賛されました。1990年には同楽団の音楽監督に就任し、その後も頻繁に来日公演を行うなどし、国内外での知名度が急上昇しました。

世界的な指揮者として

1990年代に入ると、ウェルザー＝メストはチューリッヒ歌劇場の音楽監督として活躍し、同歌劇場を有力なオペラハウスに成長させることに成功しました。その後、1998年にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団において定期公演デビューを果たし、2002年からはクリーヴランド管弦楽団の音楽監督も務めました。

2010年にはウィーン国立歌劇場の音楽総監督に就任し、地元オーストリア出身の指揮者として約半世紀ぶりにこの重要な地位を得ました。ウェルザー＝メストは、多くの名演を指揮し続け、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを扱うなど、名声を確固たるものにしました。

ところが、2014年には、ウィーン国立歌劇場の総監督との意見対立から音楽総監督を突然辞任するという出来事もありました。このように、ウェルザー＝メストは、常に新しい挑戦を求め続ける音楽家と言えるでしょう。彼の音楽に対する情熱は、今もなお多くの人々に影響を与えています。

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