フランツ1世 (神聖ローマ皇帝)

フランツ1世の生涯と業績

フランツ1世（ドイツ語: Franz I., 1708年12月8日 - 1765年8月18日）は、オーストリア女大公（女帝）マリア・テレジアの夫として知られ、神聖ローマ皇帝として1745年から1765年まで在位しました。彼の本名はフランツ・シュテファン・フォン・ロートリンゲンであり、ロレーヌ公やトスカーナ大公としても名を馳せました。

生い立ち

フランツ1世はロレーヌ公レオポルト・ヨーゼフの次男として誕生しました。母エリーザベト・シャルロッテはフランス王ルイ14世の弟の娘であり、彼は兄に先立たれたことにより家督を継ぐことになりました。神聖ローマ皇帝フェルディナント3世が祖父という血筋を持つ他、マリア・テレジアとは又従兄妹にあたります。

フランツは明るく親しみやすい性格で、マリア・テレジアの父であるカール6世からも可愛がられていました。1723年8月、彼とマリア・テレジアとの婚約が決まると、オーストリアに赴きました。自然科学に深い興味を抱く一方で、彼にとって不要な科目の勉強はあまり進まなかったようです。

マリア・テレジアとの結婚とロレーヌの放棄

1736年2月12日、フランツとマリア・テレジアは結婚。しかし、彼は周辺国の反発を受けつつ故国ロレーヌ公国をフランスに譲らざるを得ない厳しい状況に置かれました。この譲渡の際のフランツの心情は悲壮であり、彼は何度もペンを投げ捨てるほどの強い感情を抱いていたといいます。一方で、彼はメディチ家が断絶したトスカーナ大公国を継承し、新たな役割を担います。

オーストリア継承戦争と固執した権力闘争

1740年、前の皇帝カール6世の死により、マリア・テレジアはオーストリア大公として即位。彼女はフランツと共同で統治を始めますが、周辺国はオーストリア継承戦争を引き起こしました。フランツは条件によってはと和平を検討するも、マリア・テレジアは戦う姿勢を貫きます。彼女はフランツが妥協しようとするたびにこれを阻止し、戦争は続行しました。結果、フランツは、国政から徐々に疎外されることになりました。

1741年6月、ハンガリー女王としての戴冠式で、フランツはまたも屈辱を味わいます。彼は私的な席しか与えられず、教会の外から娘と共に窓越しに式を観るしかありませんでした。このような中で、彼は存在を薄くされ、宮廷においても国民からは疎まれる存在と見なされていました。

皇帝即位と国の発展

フランツは1745年に神聖ローマ皇帝となりますが、その実権は依然としてマリア・テレジアが持っていました。しかし、彼には財政面や科学振興において画期的な業績を残し、特に国債の発行に関与し、一定の経済的基盤を作り上げます。

また、フランツは子供たちを大切に思う良き父親であり、高齢の娘マリア・アンナには特別な配慮をもって接しました。しかし、彼の死後、ヨーゼフ2世による宮廷内の抗争で、マリア・アンナは非難され宮廷から追放されることとなります。

死とその後の影響

1765年8月18日、フランツは突然亡くなりました。葬儀には多くの人々が集まり、その温かな人柄を惜しむ声が数多く寄せられました。マリア・テレジアは深い悲しみに暮れ、夫の死後、喪服しかし着用しないという決意を固め、さらには彼を偲ぶ部屋を設けるなどしました。フランツの死後、皇帝位は長男ヨーゼフ2世が引き継ぎ、トスカーナ大公国は三男レオポルトが受け継ぎました。

フランツ1世の子女は、マリア・アンナ、ヨーゼフ・ベネディクト、マリア・クリスティーナ等、合計16人を数え、ハプスブルク家の未来を背負うこととなりました。彼の生涯は、時代の変遷の中での権力の苦悩と、家族への深い愛情の証ともいえます。

もう一度検索