フリップカート

フリップカート（Flipkart）

フリップカートは、インドのバンガロールに本社を置く、インド最大級の電子商取引企業です。2007年にサチン・バンサルとビニー・バンサルによって設立され、当初はオンライン書店としてスタートしましたが、その後、家電製品、アパレル、携帯電話など、幅広い商品を取り扱うようになりました。

概要

フリップカートは、自社ブランド「DigiFlip」でタブレットやノートパソコンバッグなどの製品を販売しています。インド国内の電子商取引市場では、Amazonインド法人やスナップディールと競合しており、アパレル分野では特に強い影響力を持っています。また、独自のモバイル決済サービス「PhonePe」も展開しています。

2018年には、アメリカの小売大手ウォルマートがフリップカートの株式の77%を取得し、経営権を獲得しました。この買収は、インドの電子商取引市場における大きな転換点となりました。

歴史

創業と初期

フリップカートは、2007年にインド工科大学デリー校の卒業生であるサチン・バンサルとビニー・バンサルによって設立されました。彼らはかつてAmazon.comで働いており、その経験を活かしてインドでオンライン小売事業を開始しました。最初に販売された商品は書籍で、その後、徐々に商品ラインナップを拡大していきました。

事業拡大

2011年には、ウェブサイト「Mime360.com」と「Chakpak.com」を買収し、デジタルコンテンツ事業にも参入しました。2012年には、デジタル音楽ストア「Flyte」を開設しましたが、無料の音楽ストリーミングサービスの台頭により、2013年に閉鎖されました。

2014年には、大規模なセールイベント「Big Billion Day」を実施し、大きな成功を収めました。このイベントは、フリップカートのブランド認知度向上に大きく貢献しましたが、同時に、顧客サービスや技術的な問題に関する批判も招きました。

買収戦略

フリップカートは、積極的に他社を買収することで事業を拡大してきました。主な買収事例としては、以下のようなものがあります。

2010年：ソーシャルブック発見ツール「WeRead」
2011年：デジタルコンテンツプラットフォーム「Mime360」
2011年：ボリウッドのニュースサイト「Chakpak.com」
2012年：家電製品の電子商取引サイト「Letsbuy.com」
2014年：ファッション通販サイト「Myntra.com」
2015年：モバイルマーケティングスタートアップ「Appiterate」
2016年：ファッション通販サイト「Jabong.com」（Myntra経由）
2016年：決済スタートアップ「PhonePe」
2017年：育児ソーシャルネットワーク「Tinystep」

また、2017年にはeBayのインド事業を譲り受け、eBayから出資を受けました。しかし、eBayは後にフリップカート株を売却し、インド事業を再開しました。

ウォルマートによる買収

2018年、ウォルマートは160億ドルでフリップカートの株式77%を取得し、経営権を握りました。この買収により、フリップカートはウォルマートの子会社となり、新たな成長段階に入りました。買収後、創業者のサチン・バンサルは退任しましたが、経営はウォルマートの幹部によって引き継がれました。

事業構造

フリップカートは、シンガポールに登録された企業と、インドに登録された複数の企業で構成される複雑な事業構造を持っています。初期には、関連会社の「WS Retail」が主要な販売業者でしたが、後に独立した企業に売却されました。

財務

フリップカートは、創業当初から複数のベンチャーキャピタルから資金を調達しており、急成長を遂げてきました。主な投資家には、アクセル・インディア、タイガー・グローバル、ナスパーズなどが挙げられます。また、2014年には、シンガポールの政府系ファンド「GIC」からも大型の資金調達を実施しました。

売上高は、2008-2009年度の62万ドルから2011-2012年度には7800万ドルまで増加し、2015年には7億8000万ドルを目標とするなど、急速な成長を見せていました。しかし、2012-2013年度には4400万ドルの損失を計上しており、成長と収益性のバランスが課題となっていました。

規制と訴訟

フリップカートは、その急成長の過程で、外国為替管理法違反の疑いや、外国投資規制違反の疑いを指摘され、インド政府の調査や訴訟の対象となっています。また、オンライン小売事業のマーケットプレイスモデルに関する規制も、フリップカートの事業に影響を与えています。

独占製品の発売

フリップカートは、モトローラやXiaomiといったスマートフォンメーカーと提携し、特定のモデルを独占的に販売することで、大きな成功を収めました。これらの独占販売は、フリップカートのプラットフォームの魅力を高め、顧客の獲得に貢献しました。

社内製品

フリップカートは、自社ブランド「DigiFlip」でタブレットやネットワークルーターなどの製品を販売しています。また、家庭用品やパーソナルケア用品のブランド「Citron」も展開しています。

批判

フリップカートは、急速な成長の一方で、さまざまな批判にもさらされています。特に、大規模セールイベント「Big Billion Day」では、サーバーの過負荷や価格設定の問題から、多くの顧客の不満を招きました。また、ネット中立性に関する批判や、販売者に対する不公平な施策などの問題も指摘されています。

賞と認定

創業者のサチン・バンサルとビニー・バンサルは、タイム誌の「最も影響力のある100人」に選ばれ、フォーブスのインド長者リストにも掲載されました。また、フリップカート自体も、CNBC TV 18の「インドのビジネスリーダー賞」で「Young Turk of the Year」として表彰されています。

関連リンク

電子商店街
参考文献

外部リンク

公式ウェブサイト

もう一度検索