フリートーゲ

フリートーゲ：オスロ空港を結ぶ高速鉄道

フリートーゲ（Flytoget）は、ノルウェーのオスロ・ガーデモエン空港へのアクセスを担う高速鉄道です。1998年に開業し、ノルウェーで唯一の高速鉄道として、最高速度210km/hで運行しています。オスロ中央駅までを最短19分で結び、半数の列車はさらに西方のドランメン駅まで乗り入れています。運行主体はフリートーゲ株式会社（Flytoget AS）で、国営企業として運営されています。

運行系統

フリートーゲには2つの運行系統があります。

FLY1: オスロ空港駅からドランメン駅まで、オスロ中央駅を含む7駅に停車します。
FLY2: オスロ空港駅とオスロ中央駅をノンストップで結び、その後市内・近郊の4駅に停車します。

平日はFLY1とFLY2が10分おきに交互に運行されますが、早朝、深夜、土曜日、日曜午前、夏季（7月中旬～8月中旬）はFLY2の運行がなく、20分おきの運行となります。オスロ空港駅とオスロ中央駅からは、毎時0分に発車するパターンダイヤが採用されています。

オスロ中央駅から空港までは高速新線のガーデモ線を利用しますが、西方面へは19世紀後半に敷設されたドランメン線を走行します。ドランメン線は駅間が短く、表定速度は90km/h以下でしたが、アスケー線の開業により高速化が図られました。2005年にサンヴィカ－アスケー間、2011年にサンヴィカーリサケー間が開業し、よりスムーズな運行が可能になっています。

利用状況

2009年には540万人がフリートーゲを利用し、空港への地上輸送の36%を占めました。ノルウェーの鉄道旅客数全体の約1割を担っています。定時運行率は96%と非常に高く、ノルウェー国鉄の列車が80%前後であるのに比べて高い水準を維持しています。これは、輸送容量が逼迫しているオスロ近郊で優先的に運行されていることが理由の一つです。運休は0.4%に留まっています。

チケット

フリートーゲは空港アクセス列車であり、乗客は必ずオスロ空港駅を発着する必要があります。全席自由席で、乗車券は自動販売機、ウェブサイト、アプリでオンライン購入するか、クレジットカードやデビットカードを利用したe-チケットを利用します。e-チケットは、乗車前にプラットフォームの端末にカードをタッチし、降車後にも再度タッチすることで決済が完了します。乗車前にカードを読ませていない場合は、最遠のドランメンから乗車したものと見なされます。ただし、空港から乗車する場合は、乗車前にカードを読ませる際に目的地を指定します。事前にカードを登録すれば、利用明細をメールで受け取ることができます。

学生、20歳未満の未成年者、67歳以上の高齢者、生活保護受給者、軍人などは半額の割引料金が適用されます（e-チケットの場合は事前登録が必要）。16歳未満の者は、16歳以上の同伴者がいれば無料です。

停車駅

フリートーゲの停車駅は以下の通りです。

オスロ空港駅
リレストロム駅
オスロ中央駅
ナショナルテアートレット駅
サンドヴィカ駅
アスケー駅
ドランメン駅

国鉄との競争

ノルウェー国鉄もオスロ空港とドランメン間を含む列車を運行しており、1時間に1本ずつ近郊電車と長距離列車が運行されています。フリートーゲと国鉄は別会社であり、それぞれの切符は独立しています。一般的に国鉄の方が安価ですが、学生割引の場合、両社の差はほとんどなくなります。

車両

フリートーゲは、アドトランツ（現ボンバルディア・トランスポーテーション）製のGMB71型電車を使用しています。この車両は、スウェーデン国鉄のX2000を元に設計されていますが、動力分散方式を採用しています。また、ノルウェー国鉄73型電車とほぼ同じ仕様ですが、車体傾斜機構が省かれ、内装に違いがあります。最高営業速度は210km/hです。

車両はユニット方式で、現在1ユニット4両で構成されており、最大3ユニットまで連結して運行できます。通常は2組連結した8両編成で運行されています。開業時には3両編成のユニットが16編成製造され、その後2008年に中間車が増結されて4両編成となりました。これにより定員は4割増の244席となりました。

客室は与圧式で、トンネルを高速で通過する際の快適性が高いです。乗降口に高低差はありませんが、車内には段差があり、アクセシビリティに関する批判もあります。

姉妹車両の国鉄73型でトラブルが多いのに対し、71型のトラブルはほとんどありません。これは、73型が山間を含む古い路線で運用されているのに対し、71型は路線の設備が良いからです。唯一、2004年にベアリングの不具合で1ユニットが運休となりましたが、数日中に全ユニットのベアリングが交換されました。

歴史

1992年、ノルウェー議会はオスロ・ガーデモエン空港の建設と、そのアクセス手段として鉄道を決定しました。既存のオスロ・フォルネブ空港がオスロ市外に位置していたのに対し、新空港はオスロから50kmも北に位置していたため、鉄道アクセスが不可欠でした。空港と同様に、鉄道アクセスもノルウェー国鉄の子会社であるNSB Gardermobanen ASが敷設し、運行会社からの線路利用料で経費を賄うことになりました。

ガーデモエン空港はオスロから北へ向かうHoved線に面していませんでした。Hoved線は輸送量も過密であり、単線区間もあったため、オスロからリレストロムまで複線のバイパス線を並行させ、さらに空港を経てアイツヴォルまで新線を引くことでHoved線を補完することになりました。この新線はガーデモ線と名付けられました。これはノルウェー初の高速鉄道として建設されました。

ガーデモ線建設の最大の難所は、ロメリケトンネルでした。これはオスロ中央駅近くからリレストロムまで14.58kmに及ぶトンネルで、地質学的に不安定な場所に位置していました。1997年、トンネル工事中に大規模な湧水事故が発生し、トンネル周辺の湖の水位が下がり、住宅に地盤沈下が発生しました。この問題解決には多大な費用と時間が費やされました。

フリートーゲは新空港と同じ1998年10月8日に開業しましたが、ロメリケトンネルの工事遅延により、当初は従来のHoved線を通ることになりました。トンネルが開通するまでの間、列車の運行本数は限られていました。建設費は当初の想定を大幅に上回り、多額の負債を抱えることになりました。その後、政府の介入により組織再編が行われ、2001年にFlytoget社として再出発しました。また、線路などの設備は鉄道庁に移管されました。

アスケー線の建設

ドランメン線の並行高規格線として建設されたアスケー線は、2005年にサンヴィカ－アスケー間が開業し、ドランメン方面への所要時間が短縮されました。2011年にはリサケー－サンヴィカ間が開業し、さらなる高速化が実現しました。

事故・事件

1999年、フリートーゲが速度制限を守らなかったために鉄道庁の職員が死亡する事故が発生しました。2000年には、回送列車の脱線事故が3回発生しました。2001年に自動列車制御装置が装備されてからは、この種の事故は起きていません。2000年には国鉄の列車が脱線した影響でフリートーゲも一時運休となりましたが、翌日には運行を再開しました。

設備不良による遅延や運休も度々発生しており、オスロより西方の古い路線で多く見られます。スリや従業員による妨害行為、切符販売員による横領事件も発生しています。

話題

2007年、アル・ゴアがノーベル平和賞受賞のためにオスロを訪れた際、環境負荷の少ない移動手段としてフリートーゲを利用しました。2010年のアイスランド火山噴火による航空麻痺の際には、フリートーゲの車両が国鉄の長距離輸送のために貸し出されました。

参考文献

公式ウェブサイト

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