フリードリヒ・アウグスト3世 (ザクセン王)

フリードリヒ・アウグスト3世：激動の時代を生きたザクセン最後の国王

フリードリヒ・アウグスト3世（1865年5月25日 - 1932年2月18日）は、ザクセン王国の第7代にして最後の国王です。父は第6代国王ゲオルク、母はポルトガル女王マリア2世の王女マリア・アナでした。彼は激動の時代にザクセンを統治し、その生涯は軍人、国王、そして退位後の隠遁生活と変化に富んでいました。

軍人としての経歴

1865年にドレスデンで生まれたフリードリヒ・アウグスト3世は、幼少期から軍人としての道を歩み始めます。9歳でノイシュタットの王立グラマースクールに入学し、物理学者の指導を受けました。12歳でザクセン陸軍の中尉に任官し、その後も順調に昇進を重ねます。大学では法学、政治学、歴史学を学び、研究のためヨーロッパ各地や中東を旅しました。1886年に大学を卒業後、ザクセン陸軍に復帰し、1894年には少将に昇進。師団長、軍団司令官を歴任し、軍人としての地位を確立しました。

ザクセン国王として

1904年、父ゲオルクの死去に伴い、フリードリヒ・アウグスト3世はザクセン国王に即位しました。彼は芸術と狩猟を愛し、経済の促進を図るなど、君主として様々な政策に取り組みました。また、他のドイツ王室とも良好な関係を築き、国民からの信頼回復に努めました。1912年にはドイツ皇帝ヴィルヘルム2世を招いての軍事演習を成功させ、元帥に任じられるなど、その手腕は高く評価されました。

ドイツ革命と退位

しかし、彼の治世は長くは続きませんでした。1918年、ドイツ革命が勃発し、ザクセン王国でも各地でレーテ（評議会）が結成されました。フリードリヒ・アウグスト3世は軍に攻撃を控えるよう命じ、同年11月13日、グーテボルン城で退位を宣言しました。その退位は平和裏に行われ、「まあよかろう。これからは君たちが勝手にやるんだな」という言葉を残したと伝えられています。

晩年

退位後、フリードリヒ・アウグスト3世は家族と共にシュレージエン地方に隠棲し、狩猟や旅行などを楽しみながら余生を過ごしました。1932年2月18日、隠居先の城で脳卒中により死去。その遺体はドレスデンに運ばれ、カトリック宮廷教会に埋葬されました。葬儀にはヴァイマル共和国軍が護衛し、ザクセン各地から多くの人々が参列したと言われています。

人物像

フリードリヒ・アウグスト3世は、妻ルイーゼに「ハンサムで顔立ちがしっかりした人」と評される容姿端麗な人物でした。王太子時代は「宗教的・道徳的に純粋で、率直な彼は模範的な摂政であり、人々が最も望む王族になるため努めていた」と評価され、国民からの人気も高かったようです。また、登山を趣味とし、アルプスの山々を好んで登っていたことからも、行動的な一面が伺えます。

子女

ルイーゼとの間には三男四女をもうけましたが、ルイーゼは義父ゲオルクとの不和から夫との関係が悪化し、離婚に至りました。長男ゲオルクは聖職者の道を選び、王位継承権を放棄したため、次男フリードリヒ・クリスティアンがザクセン王家の家長を継承しました。

フリードリヒ・アウグスト3世は、激動の時代に翻弄されながらも、ザクセンの君主として、また一人の人間として、その生涯を全うしました。彼の物語は、歴史の大きな流れの中で、個人の運命がどのように左右されるのかを教えてくれます。

もう一度検索