フリードリヒ・ウルリヒ (ブラウンシュヴァイク＝ヴォルフェンビュッテル公)

フリードリヒ・ウルリヒ：三十年戦争に翻弄されたヴォルフェンビュッテル侯

フリードリヒ・ウルリヒ（Friedrich Ulrich, 1591年4月5日 - 1634年8月11日）は、ブラウンシュヴァイク＝リューネブルク公の一人で、1613年から1634年までヴォルフェンビュッテル侯を務めました。父はヴォルフェンビュッテル侯ハインリヒ・ユリウス、母はデンマーク・ノルウェー王フレゼリク2世の娘エリサベト。三十年戦争で活躍した軍人クリスティアンは彼の弟にあたります。

若年での侯位継承と初期の紛争

フリードリヒ・ウルリヒは、ヘルムシュテット大学とテュービンゲン大学で学んだ後、1613年に父の死を受けてわずか14歳で侯位を継承しました。しかし、その治世は決して平穏なものではありませんでした。1615年には、自身を主君として認めようとしないブラウンシュヴァイク市との間で戦争を引き起こします。これは、若き侯としての権威を確立しようとする試みだったと考えられます。

侯位からの退けと復帰

1616年から1622年にかけて、フリードリヒ・ウルリヒは重度のアルコール中毒に陥り、国政を担うことが困難になりました。そのため、叔父であるデンマーク・ノルウェー王クリスチャン4世の支援を受けた母エリサベトによって、実質的に侯位から退けられることになります。この間、国務はアントン・フォン・シュトライトホルストが中心となって代行しました。

しかし、シュトライトホルストは粗悪な金属を使った貨幣を大量に発行し、深刻なインフレを引き起こしました。これにより、ヴォルフェンビュッテル侯国は崩壊寸前の状態に追い込まれます。この事態を重く見たクリスチャン4世は、甥であるフリードリヒ・ウルリヒを再び君主の座に復帰させることを決意します。国内貴族の支持を得たフリードリヒ・ウルリヒは、無事に支配権を回復し、シュトライトホルスト一派を侯国から追放しました。

三十年戦争の戦火と侯国の荒廃

しかし、フリードリヒ・ウルリヒの優柔不断な性格が災いし、ヨーロッパ全土を巻き込んだ三十年戦争の戦火がヴォルフェンビュッテルにも及ぶと、侯国は激しい略奪の対象となりました。カトリック軍のティリー伯爵やパッペンハイム伯爵、プロテスタント軍のクリスチャン4世やスウェーデン王グスタフ2世アドルフといった、当時の有力な軍事指導者たちが次々とブラウンシュヴァイクを襲撃し、領土の大部分を失うことになります。

後継者不在のまま死去、ヴォルフェンビュッテル系の断絶

フリードリヒ・ウルリヒは1614年にブランデンブルク選帝侯ヨーハン・ジギスムントの娘アンナ・ゾフィアと結婚しましたが、子を授かることはありませんでした。彼はアンナ・ゾフィアとの離婚を望んでいましたが、手続きが完了する前に1634年に亡くなりました。弟のクリスティアンも1626年に兄に先立って亡くなっていたため、ヴォルフェンビュッテル系は断絶することになります。後継者を失ったヴォルフェンビュッテル侯領とカレンベルク侯領は、最終的に同族であるリューネブルク系の公爵たちの手に渡りました。

フリードリヒ・ウルリヒの生涯は、三十年戦争という激動の時代に翻弄され、領土と権力を維持するために苦悩した君主の姿を浮き彫りにしています。彼の治世は、ヴォルフェンビュッテル侯国にとって試練の時代であり、その後の歴史に大きな影響を与えることとなりました。

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