フリードリヒ3世 (ザクセン選帝侯)

フリードリヒ3世：宗教改革を支えた賢明な選帝侯

フリードリヒ3世（1463年 - 1525年）は、ヴェッティン家のザクセン選帝侯であり、「賢明公」と称されました。彼はマルティン・ルターを保護し、プロテスタントを支援したことで知られています。また、ヴィッテンベルク大学の設立者としても名を残し、学問と文化の発展に大きく貢献しました。

生涯

1463年、フリードリヒはザクセン公国のトルガウで生まれました。1486年に父の死後、ザクセン選帝侯に就任し、神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世に仕えました。1519年の皇帝選挙では、自らが候補でありながら辞退し、カール5世の即位を支援しました。

しかし、1521年のヴォルムス帝国議会でルターが自説の撤回を拒否すると、フリードリヒは皇帝の決定に反し、ルターをヴァルトブルク城に匿いました。この行動は、ルターの命を救い、宗教改革の推進に大きく貢献しました。当時の政治情勢から、カール5世も教皇も、フリードリヒ3世に対し強硬な措置を取ることができませんでした。

ヴァルトブルク城での生活はルターにとって精神的に辛いものでしたが、安全な環境で新約聖書のドイツ語訳という重要な業績を成し遂げることができました。

1525年、フリードリヒ3世はランガウで亡くなり、ヴィッテンベルク城教会に埋葬されました。彼はルター派に改宗しており、その遺志は弟のヨハンによって引き継がれました。ヨハンは「不変公」と呼ばれ、エルンスト系のザクセン公はルター派諸侯の中心として、ドイツ宗教改革を支え続けました。

文化振興

フリードリヒ3世は、学問、芸術、宗教に関心が深く、ヴィッテンベルクを文化都市として発展させました。教会にはヨーロッパ有数の聖遺物コレクションが集められ、ルーカス・クラナッハが宮廷画家として活動しました。

1502年にはヴィッテンベルク大学を設立しました。この大学は、マルティン・ルターが教鞭を執り、後に神学教授となる場所であり、フィリップ・メランヒトンもギリシア語教授として迎えられました。ルターが「95ヶ条の論題」を提示したのも、この大学の聖堂であると伝えられています。

宗教改革が活発化し、ルター派への弾圧が強まると、フリードリヒ3世はヴィッテンベルクに多くの信者を受け入れました。彼の死後も、ヴィッテンベルクからはヤン・ブラホスラフやハンス・タウセンなど、東欧・北欧の宗教改革指導者が多く輩出されました。

フリードリヒ3世の賢明な統治と文化振興への貢献は、ドイツ宗教改革の歴史において重要な役割を果たしました。

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