フィリップ・メランヒトン

フィリップ・メランヒトン

フィリップ・メランヒトン（Philipp Melanchthon）、本名フィリップ・シュヴァルツェルト（Philipp Schwartzerd）として知られる彼は、1497年2月15日に生まれ、1560年4月19日に亡くなったドイツの人文主義者であり、キリスト教神学者です。彼はルター派に属し、宗教改革の過程で重要な役割を果たしました。特に、マルティン・ルターの思想を体系的に整理するために尽力し、プロテスタント正統の基礎を築いた点で、彼はジャン・カルヴァンと並び称されています。

略歴

メランヒトンの姓「シュヴァルツェルト」はドイツ語で「黒い土」を意味し、一方で彼が採用した「メランヒトン」はギリシア語で同様の意味を持つ名前です。この名前の採用は、彼がギリシア文化と人文主義を重視して育った証と言えるでしょう。1517年には若干19歳でヴィッテンベルク大学のギリシア語教授に就任し、1518年にはルターの思想に共鳴し、宗教改革に参加します。

メランヒトンはルターの直感的かつ非体系的なアプローチとは異なり、より体系的かつ知的な立場からそれを整理していきました。また、中等教育および高等教育への貢献として、彼は人文主義に基づいた学校や古典的なコレギウムを設立しました。

彼の代表作の一つが1521年に執筆された『ロキ・コンムネス』です。この作品では神学的な議論だけでなく、倫理的な論点も取り上げられ、特に信仰によって人が義とされるという考え方が強調されています。1530年には福音主義教会で最初の信仰告白『アウクスブルク信仰告白』を執筆。その内容はローマ・カトリック教会との対立を緩和する意図があり、特に教皇権や煉獄の問題には触れられていません。しかし、カトリック側が反発し「Confessio pontificia」を発表すると、メランヒトンは『アウクスブルク信仰告白の弁証』を著して反論します。これにより、『アウクスブルク信仰告白』およびその弁証はルター派にとって重要な信仰告白として位置付けられるようになりました。

しかし、次第にルターとの間で思想的相違が見られるようになります。ルターが宣義と聖化を結び付けるのに対し、メランヒトンはそれらをはっきりと区別し、宣義を罪の赦しと考える傾向が顕著となりました。後には自由意志の概念をある程度受け入れ、聖餐論においてカルヴァンに接近する姿勢が見られました。このような変化は『ロキ』の第2版や『アウクスブルク信仰告白』改訂版に反映されています。

これらの思想の違いが原因で、ルター派内部で神学的論争が発生し、メランヒトンに賛同する派閥は「フィリップ派」と称されます。彼の「人は神の恩寵に応えられる」という考えは神人協力説と呼ばれ、また彼の自由意志に関する見解は神人協力説論争として知られるものに繋がっています。メランヒトンの考えは、エラスムスと同様の見解とされることもあります。

1560年4月にメランヒトンは孫のもとに召天し、彼の墓はヴィッテンベルクの諸聖人教会にあり、マルティン・ルターの隣に安置されています。メランヒトンの影響は、宗教改革後のキリスト教界において未だに色濃く残っています。

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