フレア (兵器)

フレアの役割とその活用法

フレアは航空機や特定の目標を保護するために使用される重要な火工品の一つで、その主な目的は赤外線センサを欺くことにあります。この火工品は、特に赤外線ホーミング誘導ミサイルから航空機を守るために欠かせない存在です。フレアの効果的な使用法には、主に「セダクション」「ディストラクション」「ダイリューション」と呼ばれる三つの戦術が存在します。

フレアの三つの戦術

1. セダクション（Seduction）

この戦術では、航空機から適切な距離でフレアを発射することにより、赤外線ミサイルの追尾を逸らします。古典的な赤外線ホーミング誘導装置は、観測範囲内の全赤外線エネルギーの重心を追い、フレアが航空機の近くで明るく発光すると、その重心がフレアに移動します。このプロセスにより、ミサイルは航空機ではなくフレアを追尾することになります。

2. ディストラクション（Distraction）

この戦術は、赤外線センサが目標を追尾し始める前にフレアを展開する方法です。この場合、フレアは実際の目標よりも赤外線エネルギーが高い必要はありませんが、センサにとって有効な目標と認識されることが重要です。フレアが有効に使われれば、赤外線センサは始めからフレアを目標と認識するため、実際の目標を捉えられないという結果になります。

3. ダイリューション（Dilution）

この戦術では、複数のフレアを同時に発射することで、複数の疑似目標を生成し、赤外線センサが本物の目標を追尾するのを困難にします。この方法はセンサが同時に多くのターゲットを処理する能力を要し、実際の航空機が視界に入ることでリスクが伴います。

フレア設計の発展

フレアの設計はその使用条件や投射する機体の速度に応じた特性があります。航空機がフレアを発射する際、フレアは最大300m/sの減速度に達することがあります。また、セダクション戦術においてフレアは赤外線エネルギーを効果的に放出する必要があり、これがセンサの視野内にある短い距離（通常200メートル未満）で行わなければなりません。このため、フレアのエネルギーは瞬時に、目的のエネルギーを上回る必要があります。

様々なフレアが開発されており、攻撃に対する効果を最大化するために、複数のフレアを組み合わせて使用することが一般的です。

フレアの種類

1. 火工品型フレア

古典的なフレアはマグネシウムとテトラフルオロエチレンを混ぜたペレットを燃焼させるものであり、高温で燃焼します。これにより、航空機よりも高温なためセダクション戦術に対して有利ですが、最新の赤外線センサには効果が薄れることがあります。

2. 自然発火性デコイ装置

火工品を使用せず、自然発火性の物質を用いた赤外線デコイ装置も開発されています。これは通常、酸化反応によって赤外線放射を発生させるもので、実用距離では肉眼で見えないが、赤外線センサには認識されるよう設計されています。

実装と運用

フレアは航空機に搭載され、チャフなどとともに投射装置に収納されます。効率的な作業のため、マガジン形式での複数装備が一般的です。

日本の自衛隊もフレアを活用しており、2024年にはロシア軍機に対し、航空自衛隊の戦闘機が初めて警告の意味でフレアを使用しました。これは安全保障の観点からも重要な局面を示しています。

地上への影響と運用上の注意

フレアは燃焼時間が短いため地上への危険性は比較的低いですが、低空飛行中や、予期せぬ燃焼不良が発生した場合は周囲の航空機や動物に危険を及ぼすことがあるため、使用には注意が必要です。また、演習や曲技飛行においてもメリハリを持って使用されるべきです。

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