フレッチャー・ヘンダーソン

フレッチャー・ヘンダーソン（1897年12月18日 - 1952年12月29日）は、アメリカのジャズ音楽史において、多大な影響を与えた人物です。彼はピアニストとしてだけでなく、作曲家、そして何よりも編曲家として、スウィング・ジャズの形成に不可欠な役割を果たしました。

ジョージア州で生まれたヘンダーソンは、アトランタ大学を卒業後、ニューヨークへと活動の拠点を移します。コロンビア大学で化学を専攻しますが、当時の社会におけるアフリカ系アメリカ人に対する差別的な状況から、化学関連の職に就くことができませんでした。そこで彼は、ブラック・スワン・レコードに職を得て、ハウス・ピアニストとしてその才能を発揮し始めます。

1922年、ヘンダーソンは自身の楽団を結成します。この楽団は、1923年にコールマン・ホーキンス（テナー・サックス）、1924年にはルイ・アームストロング（トランペット）という、後にジャズ界を代表するスターを迎え入れ、アフリカ系アメリカ人の楽団としては異例の人気を博しました。このヘンダーソン楽団こそが、ビッグバンド・ジャズの隆盛を牽引した、歴史的なバンドとして知られています。ルイ・アームストロングは数年で独立しますが、コールマン・ホーキンスは1930年代初頭までヘンダーソン楽団の看板奏者として活躍しました。また、1920年代中期には、ヘンダーソンはブルースの女王、ベッシー・スミスの伴奏ピアニストとしても活動しています。

その後、ヘンダーソンはベニー・グッドマンと出会い、グッドマンの楽団のために数多くの編曲を手がけるようになります。彼の編曲は、グッドマン楽団のサウンドを特徴づける重要な要素となり、スウィング・ジャズの発展に大きく貢献しました。1939年には自身の楽団を解散し、グッドマンとの活動に軸足を移します。

しかし、1950年、ヘンダーソンは脳卒中の後遺症により麻痺を発症し、ピアニストとしての活動を断念せざるを得なくなります。そして1952年、その生涯を閉じました。

フレッチャー・ヘンダーソンの音楽的な功績は、数多くのコンピレーション・アルバムとして現在も聴くことができます。

『ファースト・インプレッションズ　Vol.1 (一九二四-一九三一)』
『スイングス・ザ・シング　Vol.2 (一九三一-一九三四)』
『A Study in Frustration』
『Hocus Pocus』
『1931-34〜タイダル・ウェイヴ』
『ケン・バーンズ・ジャズ〜20世紀のジャズの宝物』
『Sweet and Hot』

また、ベニー・グッドマン楽団のために編曲した作品も、以下のアルバムで聴くことができます。

『Sing, Sing, Sing』
『The Harry James Years, Vol. 1』
『The Best of the Big Bands』
* 『Genius of the Electric Guitar』

フレッチャー・ヘンダーソンは、ジャズの歴史において、編曲という側面から多大な貢献を果たした、まさに「影の立役者」と呼ぶにふさわしい人物です。彼の革新的な編曲は、ビッグバンド・ジャズのサウンドを確立し、後のジャズ音楽に大きな影響を与えました。

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