フレディ・コクラン

フレディ・“レッド”・コクラン

フレディ・“レッド”・コクラン（Freddie 'Red' Cochrane、1915年5月6日 - 1993年1月1日）は、20世紀半ばに活躍したアメリカ合衆国のプロボクサーです。ニュージャージー州エリザベスの生まれで、アイルランド系アメリカ人としてのバックグラウンドを持っていました。ウェルター級のトップ選手として知られ、世界王座にも輝いた経歴を持ちます。

プロキャリアの始まり

コクランがプロボクサーとしてのキャリアをスタートさせたのは1933年のことでした。まだ若く、経験も浅いながらも、彼は徐々にその才能を開花させていきます。当時のボクシング界は競争が激しく、特にウェルター級は多くの強豪がひしめく階級でした。コクランは着実にキャリアを積み重ね、勝利を重ねることで、次第にタイトル戦線に名を連ねる存在へと成長していきました。

世界王座への到達

彼のキャリアにおける最大のハイライトは、1941年7月29日に行われた世界ウェルター級タイトルマッチでした。対戦相手は、ダーティ・ファイターとして悪名高かったフリジー・ジビック。ジビックは技巧的でありながら反則まがいの戦法も辞さない難敵でしたが、コクランは巧みなボクシングでこれに対抗しました。激戦の末、彼は見事ジビックに判定勝ちを収め、念願の世界ウェルター級チャンピオンの座を獲得しました。これは彼の長年の努力と才能が実を結んだ瞬間であり、故郷ニュージャージーに新たなヒーローが誕生した出来事でした。

戦時下のブランク

しかし、王座獲得の栄光も束の間、第二次世界大戦の影が彼のキャリアに大きな影響を及ぼします。コクランはタイトルを獲得した後、アメリカ海軍に入隊し、戦務に就きました。このため、プロボクサーとしての活動は中断を余儀なくされ、ベルトを保持したままリングから離れることとなりました。通常、タイトルを獲得したチャンピオンは短期間で防衛戦を行うのが常ですが、彼のケースでは海軍での任務が優先されたため、次にリングに上がるまでに長い年月が経過することになります。

王座陥落

戦争が終結し、彼が再びプロボクサーとしてリングに復帰したのは、タイトル獲得から実に4年以上もの歳月が流れた1946年2月1日のことでした。復帰戦はいきなり世界ウェルター級の初防衛戦となり、挑戦者はマーティ・サーボでした。長期間の実戦から離れていた影響は避けられなかったのか、コクランはサーボの前に苦戦を強いられます。そして試合は4ラウンドに終結。彼はマーティ・サーボの強打の前にノックアウト負けを喫し、手にしたばかりの世界王座をわずか一度の防衛戦で失うこととなりました。この敗戦により、彼の世界チャンピオンとしての期間は非常に短いものとなりました。

キャリアの総括

フレディ・“レッド”・コクランのプロボクサーとしてのキャリアは、1933年のデビューから王座獲得、そして戦時中のブランクと失冠という波乱に富んだものでした。彼の公式な通算戦績は、116戦を戦い、72勝（25KO）36敗8引き分けという記録が残されています。多くの試合をこなしたタフなファイターであったことがうかがえます。世界チャンピオンという頂点に立ちながらも、時代の状況によってその輝きを長く保つことが難しかった選手と言えるでしょう。1993年1月1日に77歳でその生涯を終えました。

（参照：BoxRecのフレディ・コクラン戦績ページなど）

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