フレデリック・トゥーテル

フレデリック・トゥーテル（Frederick Delmont "Fred" Tootell）は、1902年9月9日に生まれ、1964年9月29日にその生涯を終えた、アメリカ合衆国の著名な陸上競技選手です。特にハンマー投を得意とし、輝かしい競技キャリアを残しました。

彼のハンマー投との出会いは、メイン州のボウディン大学に在学中だった1919年に遡ります。大学で本格的に競技を開始したトゥーテルは、着実に実力をつけ、やがて国内トップレベルの選手へと成長していきます。その才能が開花したのは1923年から1924年にかけてのこと。この時期、彼は全米選手権を2年連続で制覇するという偉業を達成しました。

そして迎えた1924年、パリオリンピックへの出場を目指します。オリンピックの選考会では、足に故障を抱えながらも、その困難を乗り越えて見事優勝し、晴れてオリンピック代表の座を射止めました。パリオリンピック本番では、彼は53.295メートルの記録を叩き出し、見事に金メダルを獲得しました。

この金メダルには、特筆すべき歴史的意義があります。アメリカ合衆国は、近代オリンピックが始まった第1回大会以来、ハンマー投において5大会連続で金メダルを獲得していました。しかし、これらの金メダリストはすべて、アイルランドからの移民選手でした。フレデリック・トゥーテルの金メダルは、アメリカ合衆国「出身」の選手として初めての快挙であり、国内の陸上競技史に新たな一ページを刻むものでした。

競技者としてのトゥーテルは、他の選手と比べて体格が小柄であり、物理的なハンデを負っていたとされています。しかし、彼は優れた技術と巧みな投擲フォームによって、その不利を補い、世界最高峰の舞台で頂点に立つことができたのです。これは、才能だけでなく、技術の研鑽がいかに重要であるかを示す事例と言えるでしょう。

オリンピックでの栄光から一年後の1925年、トゥーテルは現役競技者から指導者の道へと転身します。ロードアイランド大学において、陸上競技およびスキーのコーチに就任しました。当時の規定では、スポーツのコーチはプロフェッショナルと見なされていたため、この就任によって彼はアマチュア資格を失い、以降オリンピックなどの競技会に出場することが不可能となりました。

しかし、彼は指導者として再びオリンピックの舞台に戻ってきます。1936年にドイツで開催されたベルリンオリンピックには、アメリカ代表チームの陸上競技コーチとして参加し、後進の指導にあたりました。

その後も、トゥーテルは教育者としてのキャリアを続けました。1953年から1962年にかけての約10年間、ロードアイランド大学にて陸上部の監督を務めると同時に、体育の教授としても教鞭を執り、多くの学生たちを指導し、その育成に貢献しました。

競技者として、そして指導者として、アメリカ陸上界に多大な貢献をしたフレデリック・トゥーテルは、1964年に62歳でこの世を去りました。彼の功績は、特にハンマー投におけるアメリカ出身者初のオリンピック金メダリストとして、長く記憶されています。

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