フレンジー

映画『フレンジー』の概要

『フレンジー』（Frenzy）は、1972年に公開されたイギリスのスリラー映画で、アルフレッド・ヒッチコックが監督を務めた作品です。彼の最後から二作目として制作されたこの映画は、かつての故郷であるイギリスで撮影され、ヒッチコックにとっての復活作と見なされています。原作はアーサー・ラ・バーンによる小説『フレンジー』で、これもまた日本語訳が出版されています。

あらすじ

物語は、ロンドンを舞台に展開します。かつては空軍の英雄と言われたリチャード・ブレイニーは、今や落ちぶれた生活を送っていました。状況は一変し、彼の離婚した妻であるブレンダが殺害される直前に彼が会っていたことから、ブレイニーは連続殺人の犯人として容疑をかけられることになります。しかし、真の犯人はブレイニーの友人ラスクでした。

ブレイニーは逃亡を続ける中で、ラスクは次々と殺人を重ね、最終的にはブレイニーに罪を着せることに成功します。それに気付いたオックスフォード警部は、逮捕されたブレイニーの態度に疑念を抱き、独自に再調査を開始します。そして確信を持った彼は、ブレイニーが脱走したという知らせを受け、復讐を予感しながらラスクの住むアパートへと急行します。

警部が到着した際、彼が目にしたのは、ネクタイで絞殺された女性の死体とバールを手にしたブレイニーの姿でした。ブレイニーは逮捕を恐れ身構えますが、警部はすべてを理解していました。そこへ、ネクタイを持たないラスクが現れ、物語はさらに緊迫感を帯びます。

キャストと受賞歴

映画『フレンジー』には、ヒッチコック作品ならではのユニークなキャラクターたちが登場します。主な受賞歴としては、ゴールデングローブ賞で作品賞（ドラマ部門）、監督賞、脚本賞にノミネートされました。

演出と映像技術

冒頭のシーンでは、テムズ川の空撮から始まり、公害問題への言及、そしてネクタイ殺人の死体発見へとつながります。このような一連の映像構成は、『サイコ』の技法をさらに洗練させたものであり、ヒッチコックの演出力を際立たせています。また、迫力ある映像や緊迫感に満ちたシーンが、観客を強く引き込む要素となっています。

ブレンダの死亡シーンでは、彼女の目が極端なクローズアップで捉えられ、その瞳孔は死者のように広がっていました。この演出は、過去にヒッチコックが経験した批判への反省ともいえるでしょう。

ヒッチコックのユーモア

さらに、物語の随所にはヒッチコック特有のユーモアも見受けられます。主人公の独特な服装に対するホテルのスタッフの反応や、トラックの荷台でのコメディックなやり取り、料理教室での妻の奇妙な振る舞いなどが、ストーリー全体に微笑ましさを加えています。これらの要素は、スリリングな内容にスパイスを効かせ、観客に様々な感情を呼び起こします。

ヒッチコックの登場

映画の冒頭には、演説を聴くヒッチコック自身が登場します。予告編では、彼が浮かぶシーンもあり、観客を驚かせる演出が施されています。ヒッチコックの親しみやすさと独特の視点が、この作品の魅力の一環となっています。

『フレンジー』は、ヒッチコックの才能が詰まった作品であり、スリラー映画の新たな金字塔となりました。

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