フレンドシップ・ゲームズ

フレンドシップ・ゲームズ：幻のもう一つのオリンピック

フレンドシップ・ゲームズ（Friendship Games）、またはフレンドシップ84（ロシア語: Дружба-84）は、1984年7月2日から9月16日にかけて、ソビエト社会主義共和国連邦（ソ連）および東欧を中心とした社会主義諸国によって開催された総合競技大会です。これは、同年開催されたロサンゼルスオリンピックをボイコットした国々が中心となって行われ、代替オリンピックとも呼ばれました。

開催の背景

1984年のロサンゼルスオリンピック開幕直前、ソ連は自国選手の安全が保証されないとしてボイコットを表明しました。アメリカがオリンピックを政治利用していると非難し、これに東欧諸国が同調しました。このボイコットを受け、ソ連は代替となる競技大会の開催を計画。当初はブルガリアでの開催が予定されましたが、最終的にはソ連を含む9カ国が開催地となりました。

大会の概要

フレンドシップ・ゲームズには約50カ国が参加し、オリンピックをボイコットした国からは一流アスリートが集まりました。一方、オリンピックに参加した国からの参加者は、オリンピックに出場できなかった選手が中心でした。大会は7月2日に北朝鮮で卓球競技が始まった後、8月18日にモスクワで公式な開会式が行われました。競技は、ブルガリア、キューバ、チェコスロバキア、東ドイツ、ハンガリー、北朝鮮、モンゴル、ポーランド、ソ連の9カ国で開催され、オリンピック期間中は馬術を除いて競技は行われませんでした。

実施競技

大会では、サッカーやシンクロナイズドスイミングを除く22のオリンピック競技と、卓球、テニス、サンボといった非オリンピック競技が実施されました。女子射撃や新体操団体戦も行われましたが、オリンピックで採用された女子ロードレースは実施されませんでした。

各競技の結果

アーチェリー：ソ連が6種目中5種目を制覇
陸上競技：東ドイツのイリーナ・メスジンスキーが円盤投げで世界記録を樹立。男子800mではキューバのアルベルト・フアントレナとポーランドのリシャルド・オストロフスキーが同時優勝
バスケットボール：男女ともにソ連が優勝
ボクシング：キューバが圧倒的な強さを見せ、11階級中10階級を制覇
カヌー：東ドイツとソ連がそれぞれ6種目で金メダルを獲得
自転車：東ドイツのシュライツァー・ドライエックが個人ロードレースの会場に
飛込競技：東ドイツとソ連が金メダルを独占
馬術：西ドイツとイタリアの選手がメダルを獲得
フェンシング：男子はソ連、女子はハンガリーが活躍
ホッケー：ソ連Aチームが優勝、Bチームも3位
体操：オルガ・モステパノワが女子個人で4回、団体で6回、計10回の満点を記録
ハンドボール：男子は東ドイツ、女子はソ連が優勝
柔道：ソ連が多くの階級で金メダルを獲得
近代五種：ハンガリーのラースロー・ファービアーンが個人・団体で優勝
ボート：ソ連が14種目中11種目を制覇
セーリング：ソ連と東ドイツが金メダルを独占
射撃：オリンピック種目に加え、非オリンピック種目も実施
競泳：男子200m背泳ぎでソ連のセルゲイ・ザボロトノフが世界新記録を樹立
卓球：北朝鮮が4種目を制覇。中国も参加
テニス：ソ連が男女シングルスと男子ダブルスを制覇
バレーボール：男子はソ連、女子はキューバが優勝
水球：モスクワオリンピック金メダリストを擁するソ連が優勝
重量挙げ：ブルガリアとソ連が金メダルを独占し、多数の世界記録が更新
レスリング：フリースタイル、グレコローマンに加え、サンボも実施

オリンピックとの比較

フレンドシップ・ゲームズの結果とロサンゼルスオリンピックの結果は、メディアによって比較されることが多くありました。フレンドシップ・ゲームズで好成績を収めた選手がオリンピックに出場していれば、多くのメダルを獲得できた可能性が指摘されました。しかし、両大会の条件や施設が異なるため、単純な比較は困難であるという意見もありました。

大会の意義とその後

フレンドシップ・ゲームズは、政治的な理由でオリンピックに参加できなかった選手たちに競技の場を提供しました。しかし、IOCとの関係や政治的な背景から、その評価は複雑です。2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、ロシアとベラルーシの選手の国際大会への参加が制限される中、ロシアは新たなフレンドシップ・ゲームズの開催を計画しています。

フレンドシップ・ゲームズは、冷戦時代の政治とスポーツの関係を示す象徴的な出来事として、その名を歴史に刻んでいます。

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