フロイヒ

フロイヒ：アイルランド神話に輝く美しき戦士

フロイヒ（Fráech）は、アイルランドの伝説に登場する魅力的な英雄です。その名前は、古アイルランド語でツツジ科の植物を指す言葉に由来します。彼は、神族（ダーナ神族）の末裔であるシー、ベー・ヴィンドを母に持つ絶世の美男子として語り継がれています。

物語の中のフロイヒ

フロイヒは、元々はボイン川の女神ボアンドの姉妹であるベー・ヴィンドを母に持つ、ボイン川流域の伝承に登場する人物でした。しかし、時を経て、彼はアルスター物語群の説話にも取り込まれるようになります。彼はフィル・ヴォルグの一部族であるフィル・ドーナンの出身とされ、フェル・ディアドやマン・ムレスキと同族にあたります。

フロイヒが登場する主な物語は以下の通りです。

クアルンゲの牛捕り：この物語の第一稿本に登場します。ただし、第二稿本からは削除されており、研究者たちはこのエピソードが物語の成立後に補われたものと考えています。
フロイヒの牛捕り：『クアルンゲの牛捕り』の前話にあたる物語です。
Tochmarc Treblainne (Treblannへの求婚)
ディーン・オブ・リズモアの書：メイヴの娘フィンダヴィルへの求婚譚がバラード形式で収録されています。

クアルンゲの牛捕りにおけるフロイヒ

『クアルンゲの牛捕り』において、フロイヒはメイヴの命令でクー・フーリンの捜索に当たります。彼はクー・フーリンを発見し、決闘を挑みます。クー・フーリンは当初、戦いを避けようとしますが、フロイヒは強引に勝負を挑みます。

激しい戦いの末、クー・フーリンはフロイヒに勝利します。クー・フーリンは一度だけフロイヒに降伏の機会を与えますが、彼は敗北を認めず、その結果、クー・フーリンによって川に頭を押し込まれ、溺死という悲劇的な最期を迎えます。彼の遺体は、一旦コナハト側の野営地に回収された後、緑衣をまとった女性たちによって妖精塚へと運び去られます。

フロイヒの魅力

フロイヒは、その美貌と勇猛さで人々を魅了する英雄です。しかし、彼は同時に、運命に翻弄される悲劇的な存在でもあります。彼の物語は、アイルランドの豊かな伝承を今に伝える貴重な遺産と言えるでしょう。

一次資料

Anderson, Alan O. (1903). “Táin bó Fráich”. Revue Celtique 24: 127–154.
『フロイヒの牛捕り』の現代英語訳。スコットランド弁護士会図書館写本 72.1.40 所収の版。
Crowe, J. O'Beirne (1870). “Tain bó Fraich”. Proceedings of the Royal Irish Academy. Irish MSS series 1 (1): 134–171.
『フロイヒの牛捕り』の原文及び現代英語訳。『レンスターの書』所収の版。
O'Rahilly, Cecile (1976), Táin bó Cúailnge: Recension I
『クアルンゲの牛捕り』の第一稿本。フロイヒは Aided Fraích(The Death of Fráech) の章に登場。原文 現代英語訳

参考文献

* 上記の一次資料

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