ツツジ科

ツツジ科 (Ericaceae) の詳細

ツツジ科は、ツツジ目に分類される被子植物の一群で、その多様性と生態的な特徴から、植物学的に非常に興味深い科です。温帯から寒帯にかけて広く分布し、木本と草本の両方を含みます。

形態と生態

ツツジ科の植物は、その多くが菌根を形成します。特に、ドウダンツツジ亜科とシャクジョウソウ亜科以外の植物は、子嚢菌と共生してツツジ型菌根を形成します。ドウダンツツジ亜科はグロムス門の菌類とアーバスキュラー菌根を、シャクジョウソウ亜科は担子菌の外生菌根菌とイチヤクソウ型やシャクジョウソウ型菌根を形成します。

また、一部の種はアレロパシーを持ち、他の植物の生育を阻害する場合があります。さらに、シカや家畜が毒性を嫌って食べないため、ツツジ科の植物は大きな群落を形成することがあります。イギリス北部やアイルランドのヒース（荒野）では、エリカ属などのツツジ科植物が優勢となり、独自の生態系を築いています。

人間との関係

象徴

ツツジ科の植物は、文化的な象徴としても重要です。ネパールでは、ツツジ属の一種である Rhododendron arboreum が、ノルウェーではギョリュウモドキ (Calluna vulgaris) がそれぞれ国花に指定されています。

食用

ツツジ科で最も有名な食用種は、スノキ属のブルーベリーです。ブルーベリーは、果実がよく似た複数の種を含む総称で、日本では果実だけでなく樹種も指すことが一般的です。同属には、セイヨウスノキ（ビルベリー）やツルコケモモ（クランベリー）など、食用に適する種が多く存在します。

毒と薬用

ツツジ科の植物は、葉や花にグラヤノトキシンなどの有毒物質を含み、人間や多くの哺乳類にとって有毒です。アセビは、馬が食べると酔ったように苦しむことから「馬酔木」と書かれます。また、ツツジも「躑躅」と書き、毒性によって足がふらつく様子を表す説があります。花蜜にも有毒成分が含まれるため、直接吸ったり、ツツジ科の蜜から作られた蜂蜜を摂取すると中毒を引き起こすことがあります。また、シャクナゲの葉を誤って煎じて飲んで中毒する例もあります。ただし、バラ科のカナメモチの葉は「石南」と呼ばれ、漢方薬の生薬として利用されます。

園芸

園芸分野では、ツツジ属が特に人気です。日本では、ツツジ、サツキ、シャクナゲ、アザレアなどと細かく分類されています。ドウダンツツジ、カルミア、エリカ、アセビなども庭園樹や盆栽として親しまれています。

木材

ツツジ科の植物は、低木が多く構造材として広く利用される種は少ないですが、エリカ属のエイジュは難燃性があるため、高級パイプの原料として使われます。また、美しい木目を持つ種は、家具材として珍重されることがあります。

分類

APG植物分類体系では、ツツジ科は9亜科、約125属、4000種ほどを含む大きな科です。以前は独立した科として扱われていたイチヤクソウ科、エパクリス科、ガンコウラン科なども、現在ではツツジ科の亜科として含まれています。

以下に主な亜科と属を挙げます。

ドウダンツツジ亜科 (Enkianthoideae)
ドウダンツツジ属 (Enkianthus)
イチヤクソウ亜科 (Pyroloideae)
ウメガサソウ属 (Chimaphila)
Moneses
Orthilia
Pyrola
シャクジョウソウ亜科 (Monotropoideae)
シャクジョウソウ連 (Monotropeae)
Allotropa
Cheilotheca
Hemitomes
Hypopitys
シャクジョウソウ属 (Monotropa)
ギンリョウソウ属 (Monotropastrum)
Monotropsis
Pityopus
Pleuricospora
Pterosporeae
Pterospora
Sarcodes
Pyroleae
ウメガサソウ属 Chimaphila
Moneses
Orthilia
Pyrola
イチゴノキ亜科 (Arbutoideae)
イチゴノキ属 (Arbutus)
Arctostaphylos
ウラシマツツジ属 (Arctous)
Comarostaphylis
Ornithostaphylos
Xylococcus
イワヒゲ亜科 (Cassiopoideae)
イワヒゲ属 (Cassiope)
ツツジ亜科 (Ericaceae)
Bejarieae
Bejaria
チシマツガザクラ属 (Bryanthus)
Ledothamnus
Empetreae
Ceratiola
Corema
Empetrum
Ericeae
ギョリュウモドキ属 (Calluna)
Daboecia
エリカ属 (Erica)
Bruckenthalia
Phyllodoceae
ホツツジ属 (Elliottia)
イワナシ属 (Epigaea)
カルミア属 (Kalmia)
Kalmiopsis
Leiophyllum
ミネズオウ属 (Loiseleuria)
ツガザクラ属 (Phyllodoce)
Rhodothamnus
Rhodoreae
ヨウラクツツジ属 (Menziesia)
ツツジ属 (Rhododendron)
ジムカデ亜科 (Harrimanelloideae)
ジムカデ属 (Harrimanella)
Styphelioideae亜科
Archerieae
Archeria
Cosmelieae
Andersonia
Cosmelia
Sprengelia
Epacrideae
Budawangia
Epacris
Lysinema
Rupicola
Woollsia
Oligarrheneae
Needhamiella
Oligarrhena
Prionoteae
Lebetanthus
Prionotes
Richeeae
Dracophyllum
Richea
Sphenotoma
Styphelieae
Acrotriche
Androstoma
Astroloma
Brachyloma
Coleanthera
Conostephium
Croninia
Cyathodes
Cyathopsis
Decatoca
Leptecophylla
Leucopogon
Lissanthe
Melichrus
Monotoca
Pentachondra
Planocarpa
Styphelia
Trochocarpa
スノキ亜科 (Vaccinoideae)
Andromedeae
ヒメシャクナゲ属 (Andromeda)
Zenobia
Gaultherieae
ヤチツツジ属 (Chamaedaphne)
Diplycosia
シラタマノキ属 (Gaultheria)
イワナンテン属 (Leucothoe)
Pernettya
Pernettyopsis
Tepuia
Lyonieae
Agarista
Craibiodendron
ネジキ属 (Lyonia)
アセビ属 (Pieris)
Oxydendreae
Oxydendrum
Vaccinieae
Agapetes
Anthopteropsis
Anthopterus
Calopteryx
Cavendishia
Ceratostema
Costera
Demosthenesia
Didonica
Dimorphanthera
Diogenesia
Disterigma
Gaylussacia
Gonocalyx
Macleania
Mycerinus
Notopora
Oreanthes
Orthaea
Pellegrinia
Plutarchia
Polyclita
Psammisia
Rusbya
Satyria
Semiramisia
Siphonandra
Sphyrospermum
Symphysia
Themistoclesia
Thibaudia
Utleya
スノキ属 (Vaccinium)

分類体系の変遷

かつては、子房上位のツツジ亜科と子房下位のスノキ亜科に大きく分けられていましたが、現在ではさらに細かく分類されています。

その他の情報

コメバツガザクラ属 (Arcterica) など、ツツジ科に分類される植物は他にも多く存在します。
* ツツジ科に関する詳しい情報は、外部サイトやレッドデータ検索システムを参照してください。

ツツジ科は、その多様性と複雑な分類体系、そして人間との深い関わりにおいて、植物学的に重要な科であると言えるでしょう。

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