フロッセンビュルク強制収容所

フロッセンビュルク強制収容所の概要

フロッセンビュルク強制収容所（KZ Flossenbürg）は、ナチス・ドイツがバイエルン州オーバープファルツ地方に設置した強制収容所です。フロッセンビュルク村近郊に位置し、その開設は、同地で産出される花崗岩の採掘を囚人たちに強制労働させることを目的としていました。この地域は冬の寒さが厳しく、囚人たちは過酷な環境下で労働を強いられました。

1938年5月8日、ダッハウ強制収容所から最初の囚人たちが移送され、その後ブーヘンヴァルトやザクセンハウゼンなど各地の収容所からも囚人が送り込まれました。同年12月末には収容者数は1500人に達しました。

強制労働の目的

ナチス・ドイツの指導者アドルフ・ヒトラーと建築家アルベルト・シュペーアは、ベルリンをはじめとする都市の再開発計画やニュルンベルク党大会のための建築物建設を計画しており、大量の石材を必要としていました。そこで、ハインリヒ・ヒムラーは、親衛隊企業「DEST」に花崗岩採掘場を買収させ、囚人による強制労働を開始しました。

しかし、第二次世界大戦の開始に伴い、収容所での労働は戦争経済への奉仕が優先されるようになり、1943年以降は花崗岩の採掘は副次的となりました。メッサーシュミット社をはじめとする軍需工場での労働が中心となり、囚人たちは過酷な労働環境で酷使されました。

反ナチス関係者の処刑

1944年7月20日のヒトラー暗殺計画に関与したとされるヴィルヘルム・カナリス提督、ハンス・オスター将軍、ディートリヒ・ボンヘッファーらが、ベルリンのゲシュタポ本部や刑務所の被災後、1945年2月上旬にフロッセンビュルク強制収容所に移送されました。1945年4月8日には、収容所内で彼らに対する軍事法廷が開かれ、所長のマックス・ケーゲルも裁判官を務めました。カナリスら7人は反逆罪で死刑判決を受け、翌4月9日に収容所の中庭で処刑されました。

収容所の解放

1945年4月中旬になると、収容所からの撤収が開始され、囚人たちはダッハウ強制収容所へ移送されることになりました。この移送は徒歩で行われ、多くの囚人が途中で命を落としました（死の行進）。移動速度が遅かったため、ほとんどの囚人はダッハウに到着する前にアメリカ軍によって保護されました。同年4月23日、アメリカ軍第90歩兵師団538連隊によってフロッセンビュルク強制収容所は解放されました。

収容所の構造と運営

収容所の正門には、ナチス強制収容所特有のスローガンである「Arbeit macht frei（働けば自由になる）」が掲げられていました。

歴代の収容所長は、ヤーコプ・ヴァイゼボルン、カール・キュンストラー、エーゴン・ツィル、マックス・ケーゲルが務めました。所長の補佐役はハンス・アウマイヤーとカール・フリッチュが務め、両名ともアウシュヴィッツでの勤務経験がある大量殺戮者でした。

フロッセンビュルク強制収容所は、ナチス政権下で行われた非人道的な行為の象徴として、今もなおその歴史を語り継いでいます。

参考文献

マルセル・リュビー著『ナチ強制・絶滅収容所』筑摩書房。ISBN 978-4480857507

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