フローズン・タイム

『フローズン・タイム』（原題：Cashback）は、写真家ショーン・エリス監督が手掛けた2006年製作のイギリス映画です。同名タイトルの18分間の短編映画が、第78回アカデミー賞短編映画賞にノミネートされた実績を基に、長編映画として制作されました。

物語の中心人物は、美大に通う青年ベンです。彼は初めての恋人スージーと別れ、深い後悔の念から眠れなくなります。友人の勧めでモデルの女性と付き合うことを試みますが、スージーへの想いを断ち切れず、不眠の日々は続きます。

眠れない時間を有効活用しようと、ベンはスーパーマーケットの夜勤を始めます。そこで彼は、憂鬱なシャロン、プライドの高い店長、お調子者のバリーとマット、格闘技に長けたブライアンなど、個性豊かな仲間たちと出会います。

別れから2週間が経ってもなお眠れないベンは、やがて時間を一時的に停止させる不思議な力を身につけます。静止したスーパーマーケットで、彼は美人の客の裸体を写生するなど、時間停止の能力を独特な方法で利用します。

支店対抗のフットサルを通して親睦を深めたシャロンは、スペイン語を勉強して海外へ行くことを夢見ていました。彼女と別れた後、ベンはシャロンへの想いを募らせ、静止した世界で何度も彼女の絵を描きます。シャロンからのキスによって、ベンはスージーへの執着から解放され、不眠から抜け出します。

店長のバースデーパーティーで、ベンはスージーと再会します。スージーには新しいボーイフレンドがおり、その相手が店長の弟だったことが明らかになります。スージーからキスをされたベンを、シャロンが目撃し、彼女は怒ってパーティー会場を去ろうとします。その瞬間、ベンは時間を停止させますが、時間を巻き戻すことはできません。シャロンの怒りを鎮めることができず、ベンは再び不眠に陥ってしまいます。

その後、バリーとマットのいたずらがきっかけで、ベンの作品が画廊のオーナーの目に留まり、個展を開くことになります。「静止した瞬間」（A Frozen Second）と名付けられた個展では、シャロンを描いた絵が多数展示され、高い評価を得ます。個展に訪れたシャロンは、絵に込められたベンの誠実な気持ちを受け止め、彼の謝罪を許します。

映画では、ベンをショーン・ビガースタッフ、シャロンをエミリア・フォックス、その他個性的なキャラクターを多くの俳優が演じています。Rotten Tomatoesでの支持率は47％、Metacriticでの加重平均値は54/100と、評価は分かれていますが、独特の世界観と魅力的なキャラクターによって構成された作品となっています。2008年には映画館大賞「映画館スタッフが選ぶ、2008年に最もスクリーンで輝いた映画」第91位にランクインしています。失恋、友情、成長、そして不思議な能力を通して描かれる、甘酸っぱくも心温まる物語は、多くの観客の心に響く作品と言えるでしょう。

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