フロールヴ・クラキ

フロールヴ・クラキ：伝説のデンマーク王

フロールヴ・クラキ（6世紀前半）は、北欧の伝承に登場する伝説的なデンマーク王です。フローズルフ、ロルフォ、ロルー、ロルブ・クラゲなど、様々な名で語り継がれています。彼はスキョルドゥング家の一員であり、フロースガールの甥、ヘアルフデネの孫にあたります。伝説的な剣スコヴヌングを所有していたことでも知られています。

伝承におけるフロールヴ

フロールヴは、アングロ・サクソンとスカンディナヴィアの伝承に共通して登場します。「ベーオウルフ」や「ウィードシース」では、フロースガールとの関係やフロージ、インゲルドとの対立が描かれています。スカンディナヴィアの資料では、彼のライア王としての生涯や、フロースガールの兄弟ハールガとの関係がより詳細に語られています。

ベーオウルフにおける描写

「ベーオウルフ」では、フローズルフはフロースガールの甥として登場し、互いに忠実な関係であるとされています。フロースガールには、ヘオロガール、ハールガという兄弟と、名前不明の姉妹がおり、彼らは皆ヘアルフデネの子であり、シュルディング一族として知られています。ただし、「ベーオウルフ」では、フローズルフの両親が誰であるかは明示されていません。

フロースガールと王妃ウェアルフセーオウには2人の息子がおり、フロースガールが亡くなった場合、フローズルフが彼らの後見人になるとされています。王妃はフローズルフを信頼しており、彼が王座を奪うために息子たちを殺害するとは考えていません。

スカンディナヴィアの伝承

スカンディナヴィアの資料では、フロースガールの息子フレースリーチとフロースムンドについては触れられていません。フレースリーチはデンマーク王インギャルドの息子、あるいは後継ぎのフローリクと同一人物であるという説もあります。フローリクはフロールヴに殺害されたとも伝えられています。

シュルディング一族は、フローダと彼の息子インゲルド率いる他の氏族と対立していました。フローズルフが登場する古英語詩「ウィードシース」でも、この戦いに関連する事柄が言及されています。

フロールヴとフローズルフの同一視

一般的に、フロールヴ・クラキは「ベーオウルフ」の登場人物であるフローズルフと同一視されています。「ベーオウルフ」では、フローズルフがフロースガールの息子フレースリーチとフロースムンドから王座を簒奪しようとする予兆が見られます。『デンマーク人の事績』にも同様の記述があり、レーリク（フレースリーチのデンマーク語化された形）がフロールヴによって打ち倒されたとされています。

スカンディナヴィアの伝説では、フレースリーチ殺害の原因の説明が異なっており、あたかもフレースリーチが誰であるかが忘れられ、物語の語り手が詳細をでっち上げたかのようです。フレースリーチの殺害は、ヘオロットの館が燃える時に起きたともされています。また、アイスランドの資料では、フロールヴが義弟ヒョルヴァルズによって館で焼死したという伝説もあります。

ベーオウルフとボスヴァル・ビャルキ

ベーオウルフ自身がフロールヴ・クラキの物語の登場人物と同源であるならば、ベーオウルフはボスヴァル・ビャルキと同一視されるのが一般的です。ボスヴァル・ビャルキの年長の兄ソーリルはイェータランドの王になります。ボスヴァル・ビャルキはベーオウルフのように、イェータランドからデンマークへやって来て、2年間宮廷を荒廃させた獣を殺します。この怪物は「ベーオウルフ」のグレンデルとは異なり、「ベーオウルフ」に登場する竜のような姿をしています。ベーオウルフとウィーイラーフが竜を殺すように、ボスヴァル・ビャルキとヒャルティも協力して怪物を殺します。

フロースガールとフローアル

デーン人の王フロースガールは、フローアルと同一視されます。彼は「ベーオウルフ」以外の資料ではフロールヴ・クラキの叔父であり、兄のヘルギの共同統治者です。しかし、フローアルは兄弟に先立ち亡くなるか、妻の王国を治めるためにノーサンバーランドへ出発し、ヘルギがデンマークを単独で統治します。「ベーオウルフ」では、ハールガが亡くなり、フロースガールが第一位の統治者となり、ハールガの息子フローズルフが年少の共同統治者になっています。

その他の資料におけるフロールヴ

「ウィードシース」では、フロースガールとフローズルフについて言及されています。また、「ライア年代記」や「デンマーク人の事績」など、他の資料にもフロールヴの物語が登場します。これらの資料では、フロールヴの出自やスウェーデンとの関係、そして悲劇的な最期などが描かれています。

現代におけるフロールヴ

フロールヴ・クラキの物語は、現代の文学作品にも影響を与えています。ポール・アンダースンの小説「Hrolf Kraki's Saga」や、J・R・R・トールキンの「セリーチ・スペル」などがその例です。

フロールヴ・クラキは、伝説的なデンマーク王として、今もなお多くの人々に語り継がれています。

参考文献

ベーオウルフ
ウィードシース
ライア年代記
デンマーク人の事績
フロールヴ・クラキのサガ
スキョルドゥンガ・サガ
詩語法
ユングリンガ・サガ
グロッティの歌
ガウトレクのサガ

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