フーガ BWV578

J.S.バッハ《フーガ ト短調 BWV 578》：親しみやすい旋律と緻密な構成

ヨハン・ゼバスティアン・バッハの《フーガ ト短調 BWV 578》は、オルガン曲として知られ、「小フーガ」という愛称で広く親しまれています。作曲時期については、アルンシュタット時代（1703年 - 1707年）とする説と、ヴァイマル時代（1708年 - 1717年）以降とする説があります。後者の説は、楽曲に見られるイタリア盛期バロック音楽の影響や、フーガ主題の完成度の高さなどを根拠としています。

概要

楽曲の規模から「中フーガ」と呼ばれることもある《幻想曲とフーガ BWV 542》との混同を避けるため、「小フーガ」の愛称が用いられています。この「小フーガ」「大フーガ」という呼称は、BWV番号が付与される以前からの名残です。

《フーガ ト短調 BWV 578》は、バッハの作品の中でも特に旋律が分かりやすいことで知られています。4小節半のフーガ主題は、多くの人に親しまれており、作品全体は数学的に精密な4声フーガとして構成されています。また、対主題（固定対位句）を伴うことも特徴の一つです。

楽曲構成の特徴

この楽曲には、イタリアの作曲家コレッリの作曲技法の影響が見られます。エピソード部分において、模倣し合う2声にそれぞれ8つの音符が現れ、前半4音で一気に駆け上がり、後半4音で一息に駆け下りるという手法が用いられています。この技法は、コレッリの作品でよく見られるものです。

また、楽曲の基本的なリズムは4つに分けることができ、そのうち2つが主題、残りの2つが応答となっています。具体的には、以下のようになっています。

1. 主題（ソプラノ）
2. 応答（アルト）
3. 主題（テナー）
4. 応答（バス）

このように、各声部が主題と応答を交互に担当することで、楽曲に統一感と奥行きが生まれています。

《フーガ ト短調 BWV 578》は、バッハのオルガン曲の中でも特に親しみやすく、フーガの構造を理解する上でも最適な作品と言えるでしょう。その美しい旋律と緻密な構成は、バッハの音楽的才能を余すところなく示しています。

Fugue in G minor, BWV 578の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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