ブガッティ・シロン

ブガッティ・シロン (Chiron)

ブガッティ・シロンは、ブガッティ・オトモビルによって2016年から2024年まで製造される500台の限定モデルです。その名は、かつて同社で活躍したレーシング・ドライバー、ルイ・シロンに由来しています。2016年のジュネーヴ国際モーターショーの前日に発表されたシロンは、価格が260万USドル（約240万ユーロ）と、前モデルのヴェイロンの約2倍となりました。驚くべきことに、発表からすぐに完売しました。

パワートレイン

シロンには、8リッターのW16エンジンが搭載されています。これは、ヴェイロンと同様のエンジンですが、最高出力は1500馬力、最大トルクは163.2kgmと、実に大幅にパフォーマンスが向上しています。エンジンとギアボックスの重量は700kgもあり、全体重量は1995kgに達しますが、各コンポーネントが改良され、重量増を抑えた設計になっています。四輪駆動システムはハルデックス製で、デュアルクラッチトランスミッションはリカルド製です。

ターボチャージャーは4基搭載されており、発進時は2基のみが動作し、エンジン回転数が3800rpmに達すると残りの2基が作動します。これにより、低速域からのトルク特性がリニアになり、運転しやすくっています。

デザイン

シロンの外観は、ウラカンのデザインにも携わったサシャ・セリパノフによって手がけられました。伝統的なブガッティのスタイルを維持しながら、空気力学とエンジン冷却を重視した技術的デザインが施されています。特にフロントグリルは馬蹄形で、1930年代の名車「タイプ57SC アトランティーク・クーペ」の流線形デザインが影響を与えています。このデザインは、エンジンの熱を効率的に排出するための工夫でもあり、直進安定性を考慮した設計となっています。

性能

公称の最高速度は420km/hですが、実際にはそれを超えるスピードが可能とされています。さらに、理論上は500km/hを超えることもできるとされていますが、それを実現するためには新しいタイヤの開発が求められています。2019年9月にはプロトタイプが最高速計測で306.55mph（490.48km/h）を記録し、ハイパーカーとしては初の300mph超えを達成しました。燃費性能はカタログ値で3km/L、実測で4.7km/Lにおよびます。

バリエーション

ブガッティ・シロンはさまざまなバリエーションが存在し、それぞれ個性的な特徴を持っています。例えば、シロン・ヴァンクール・デ・クールは2019年にサウジアラビア向けに製作されたワンオフモデルで、内装はブラウンが施されています。また、シロン・ノワールエディションは、限定20台で発表されたカスタムモデルです。さらに、シロン・ピュアスポーツやシロン・スーパースポーツなど、性能やデザインの異なるバリエーションも製造されています。これらのモデルは、各々が独自の特長を持ち、完売後も多くのファンに愛されています。

シロンは、性能、デザイン、技術の各面で贅を尽くしたハイパーカーであり、自動車業界における名作としてその名を刻んでいます。

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