ブシャール4世・ダヴェーヌ

ブシャール4世・ダヴェーヌ（1182年 - 1244年）は、アヴェーヌおよびエトルーントの領主であり、ジャック1世・ダヴェーヌとアデル・ド・ギーズの息子として生まれました。ブロワ伯ゴーティエ2世の弟にあたります。彼は、その波乱に満ちた生涯において、聖職者から領主へと転身し、結婚を巡る複雑な政略と戦いに巻き込まれていくことになります。

生涯

ブシャールは、若い頃はランの教会でカントル（聖歌隊指揮者）および副助祭を務めていました。しかし、1212年にエノーの代官（バイイ）に任命されたことが、彼の人生を大きく変える転機となります。この役職に就いたことで、彼はフランドル女伯・エノー女伯ジャンヌの妹マルグリットの家庭教師と後見人を務めることになりました。同年のうちに、ブシャールはマルグリットと結婚しますが、当時マルグリットはまだ10歳であったため、結婚は形式的なものにとどまりました。この結婚は、女伯ジャンヌとその夫フェランの同意を得ておらず、二人はこの結婚を阻止しようとしましたが、失敗に終わりました。

ブシャールの生涯は、好戦的な行動に彩られています。まず、彼は父からの遺産を多く相続した兄ゴーティエの領地を攻撃しました。その後、フランドルに攻め入り、女伯ジャンヌとフェランにマルグリットとの結婚を認めさせようとしました。1214年には、ブーヴィーヌの戦いでフランドル側について戦いましたが、この戦いはフランス王フィリップ2世の勝利に終わりました。戦後、フィリップ2世はローマ教皇インノケンティウス3世に対し、ブシャールとマルグリットの結婚を無効とするよう進言しました。教皇はこれを受け、1216年1月19日にブシャールを破門しました。

破門されたブシャールとマルグリットは、ルクセンブルクに亡命しました。1219年、ブシャールは戦闘中に捕らえられ、ヘントに2年間幽閉されました。解放の条件として、マルグリットはブシャールとの結婚の解消を受け入れ、ブシャールは教皇の命によりイタリアへ向かうことになりました。しかし、帰国後、ブシャールはジャンヌの命令によって斬首刑に処されました。

子女

ブシャールは、マルグリットとの間に3人の息子をもうけました。彼らの息子たちは、後のフランドル継承戦争において重要な役割を果たしました。

ボードゥアン (1217年 - 1219年) - 両親と共にルクセンブルクに亡命。
ジャン1世 (1218年 - 1257年) - エノー伯。
ボードゥアン (1219年 - 1295年) - ボーモン領主。

ブシャール4世・ダヴェーヌの生涯は、中世ヨーロッパの複雑な権力闘争と、結婚が政治的な道具として利用されていた状況を色濃く反映しています。彼は、聖職者から領主へ、そして戦いと政略に翻弄される人生を送りました。彼の子孫たちは、その後の歴史において重要な役割を果たすことになります。

参考文献

Platelle, Henri (2004) (フランス語). Présence de l'au-delà: une vision médiévale du monde. Presses Universitaires du Septentrion.
Bradbury, Jim (1998). Philip Augustus: King of France 1180-1223*. Taylor & Francis.

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