ブッシュ (映画)

映画『ブッシュ』：アメリカ合衆国第43代大統領の波乱の人生と時代

オリバー・ストーン監督による2008年製作のアメリカ映画『ブッシュ』（原題: W.）は、第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュの生涯を描いた伝記映画です。主演はジョシュ・ブローリンが務め、ブッシュ大統領の複雑な人物像を熱演しています。 日本公開時の予告編では「世紀のKY(靴よけ)男 ブッシュ」というキャッチコピーが使われ、話題を呼びました。

キャストと製作

映画には、ブッシュ大統領を取り巻く主要人物たちが多数登場します。ローラ・ブッシュ夫人役にはエリザベス・バンクス、父であるジョージ・H・W・ブッシュ元大統領役にはジェームズ・クロムウェルなど、実力派俳優たちが集結しています。 さらに、ディック・チェイニー副大統領、ドナルド・ラムズフェルド国防長官、コンドリーザ・ライス国務長官など、ブッシュ政権の中枢を担った人物たちがリアルに描写されています。 それぞれの役柄には、日本語吹き替え版も用意されており、岩尾万太郎さん、今泉葉子さん、小林清志さんなどベテラン声優陣が参加しています。


本作の監督であるオリバー・ストーンは、当初ソンミ村虐殺事件に関する映画の製作を予定していましたが、全米脚本家組合ストライキと主演俳優の降板により計画が頓挫。その後、ジョージ・W・ブッシュ大統領の伝記映画へとプロジェクトを変更しました。 ブッシュ大統領役には当初、クリスチャン・ベールが予定されていましたが、最終的にジョシュ・ブローリンが抜擢されました。興味深いことに、クリスチャン・ベールは後に『バイス』でディック・チェイニー副大統領役を演じることになります。


撮影はルイジアナ州シュリーブポートで行われ、約2ヶ月間の撮影期間を経て、2008年10月17日にアメリカで公開されました。

映画の内容と評価

映画『ブッシュ』では、ブッシュ大統領の若き日から大統領就任、そしてイラク戦争に至るまでの激動の人生が描かれています。 彼の性格、決断、そして周囲の人物との関係性などが克明に描写されており、大統領としての功績と失敗の両面が提示されます。 大統領としての彼の政治的決断、家族との関係、そして個人的な苦悩などがリアルに表現されています。


公開後、映画『ブッシュ』は批評家の間で賛否両論を巻き起こしました。レビュー・アグリゲーターサイトRotten Tomatoesでは、支持率58%、Metacriticでは加重平均値56/100という評価となっています。 映画の史実との整合性について、議論が巻き起こったことも注目すべき点です。

史実との相違点

ブッシュ研究家のジェイコブ・ワイズバーグは、映画の内容に2点の間違いを指摘しています。一つ目は、ブッシュ大統領がチェイニー副大統領の意見に反論するシーン。実際には、チェイニー副大統領はブッシュ大統領を直接的に対立させるようなことはせず、巧みに操っていたとされています。二つ目は、ブッシュ大統領が海岸で「闇がある」と呟くシーン。これは、実際には起こらなかった詩的な表現だとしています。（なお、日本版ではこのシーンはカットされているようです）。

まとめ

映画『ブッシュ』は、単なる大統領の伝記映画ではなく、アメリカという国の歴史、そして複雑な人間ドラマを深く掘り下げた作品と言えるでしょう。 歴史的正確性に関する議論がある一方で、俳優陣の熱演とオリバー・ストーン監督独特の演出により、観る者の心に強く訴えかける作品となっています。 大統領という立場の人間像、そして時代背景を理解する上で、貴重な一作と言えるでしょう。

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