ブヤン・ダシュ

ブヤン・ダシュの生涯と西寧王家の形成

ブヤン・ダシュ（Buyan Daš）は、モンゴルの皇族の一員として、チンギス・カンの次男、チャガタイの子孫にあたります。彼はモンゴル帝国の全盛期に活躍し、特に大元ウルスにおいて重要な役割を果たしました。彼の存在は、漢文史料『元史』には記されていないものの、『高貴系譜』やその他の系譜史料によって、彼の家系との関係が明らかになっています。

戦歴と家族の形成

ブヤン・ダシュの兄、ノム・クリと共に、彼はカイドゥ・ウルスに対抗するための司令官として名を馳せました。特に、1314年ごろには、彼とノム・クリ、彼らの子孫であるコンチェクが共に12万人を率いて、粛州からウイグリスタンにかけての地域に駐屯していました。この際、彼らはチャガタイ・ウルスのエセン・ブカの弟であるエミル・ホージャが指揮する2万の軍と対峙しています。

その後、ブヤン・ダシュは兄ノム・クリの後を継ぎ、独自の王家を形成しました。彼の家族にはクタトミシュという名の兄弟があり、彼もまた重要な役割を果たしました。クタトミシュは最初に「西寧王」と呼ばれ、その後の内乱における功績によって「豳王」位に昇進しました。クタトミシュの死後、ブヤン・ダシュの息子スレイマンがその地位を引き継ぎ、以降彼の系統は西寧王家として知られるようになりました。

子孫の活動

ブヤン・ダシュの嫡子スレイマンは、ジャヤガトゥ・カアの治世である1330年に「西寧王」の称号を受けました。以降2年間でスレイマンは安定王ドルジバルの例に倣い、王傅官を4名設けることに成功し、印璽を授与されました。敦煌の莫高窟に残された記録には、スレイマンの家庭生活や彼の子供たちに関する詳細が記載されており、彼の妻や子供たちについて記述されています。スレイマンの子にはヤガン・シャーやスルタン・シャーが含まれており、彼らもまた王位を継承していくことになります。

ヤガン・シャーは紅巾の乱の際に出征し、至正12年には四川で徐寿輝の勢力との戦いに参加しました。彼は「四川から沙州へと帰還した」との記録が残っており、これによってブヤン・ダシュの家系が沙州を拠点にしていたことが確認されます。これ以後の西寧王家についての情報は限られていますが、ヤガン・シャーの弟、スルタン・シャーの子にはエルケシリという名があり、彼は明代初期に登場する「王子阿魯哥失里」と同一人物であると考えられています。

結論

ブヤン・ダシュはモンゴル帝国の歴史において重要な人物であり、彼の家系は後に西寧王家という形でその名を残しました。彼の子孫による活動はモンゴルの歴史や文化への寄与を示しており、彼らが過ごした時代の情勢を反映しています。

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