ブラインド・ウィリー・ジョンソン

ブラインド・ウィリー・ジョンソン（1897年1月22日 - 1945年9月18日）は、20世紀初頭のアメリカで活躍した、伝説的なゴスペルミュージシャンであり、ブルースギタリスト、そして宣教師でした。

彼はギター・エヴァンジェリスト（ギター弾き語りの福音伝道師）として知られ、その音楽はゴスペル界の先駆的存在として高く評価されています。世俗的なブルースを演奏することは一切ありませんでしたが、彼の音楽形式からはブルースからの強い影響が色濃く感じられます。

卓越したスライドギター奏者であったジョンソンのレコードは、ゴスペル音楽のみならず、ブルースの世界にも大きな衝撃を与えました。宗教的な内容の歌詞でありながら、彼のギターは容赦なくリズムを刻み、そのしわがれたヴォーカルは、初期ブルース歌手たちの持つ強烈さに匹敵するものでした。そのため、スライドギターを愛する人々やブルースファンからは、畏敬の念を込めて彼の名前が語り継がれています。

ジョンソンの音楽の特徴は、ペンタトニックスケールを用いたメジャー調のメロディと、同様に印象的なマイナー調の楽曲を交互に演奏することでした。彼の歌声は、深みのあるしわがれ声が基本でしたが、時折心地よい中音域の声に変化し、聴衆を魅了しました。

ライブパフォーマンスでは、女性ヴォーカリストが参加することもありましたが、基本的にはソロで演奏を行っていました。低音弦を中心としたフィンガーピッキングと、正確なスライド奏法を組み合わせたバッキングギターも自身で演奏し、その才能を発揮しました。

生涯を通じて彼がレコーディングした楽曲は、わずか90分程度であり、すべて1920年代後半に録音されたものです。しかし、その短い時間に凝縮された音楽には、人々の心を揺さぶり、閉ざされた心を解き放つ力がありました。

1927年から1930年にかけて、ジョンソンはコロンビア・レコードで30曲を録音しました。しかし、世界恐慌の影響でレコードの売り上げが激減し、彼の楽曲の一部は1932年にヴォカリオン・レコードから再発売されたものの、その後レコーディングの機会は訪れませんでした。1945年に亡くなるまで、彼はテキサス州ボーモントで教会や街角で歌い続けました。彼の死因は肺炎でしたが、病院に運ばれた際、盲目であることを理由に診察を拒否されたという悲しいエピソードが残されています。

死後数十年の時を経た1977年、彼の音楽は再び脚光を浴びることになります。ボイジャー計画において、宇宙探査機ボイジャーに搭載されたゴールデンレコードに、ベートーヴェンやモーツァルトといった巨匠たちの楽曲と共に、ジョンソンの代表曲「Dark Was the Night, Cold Was the Ground」が収録されたのです。彼の音楽は、地球の文化を代表する音楽として、宇宙に向けて発信されました。

ブラインド・ウィリー・ジョンソンは、ゴスペルとブルースの境界線を越え、人々の魂に深く響く音楽を創造した、真の音楽家でした。

もう一度検索