ブラックリスト (脚本プロジェクト)

ブラックリストとは

ブラックリスト（The Black List）は、映画化されていない脚本を対象とした評価と映画製作マッチングのためのプロジェクトです。ユーザー登録制のウェブサイトとして運営されており、年間の投票ランキング上位リストは広く一般に公開されます。その目的は、まだ注目されていない才能ある脚本家を効率的に見つけ出すことです。

フランクリン・レナード（後にユニバーサル・ピクチャーズの役員などを歴任）によって2005年にランキング調査が開始され、2011年には脚本家と映画製作関係者のマッチング機能が追加され、ユーザー登録制のサイトへと発展しました。

2017年10月時点で、約1000本の脚本がサイトに登録され、そのうち300本以上が映画化され劇場公開に至っています。これらの作品は、アカデミー賞（2017年2月までに264ノミネート、48受賞）やゴールデングローブ賞など、数々の賞を受賞しています。映画化された作品の興行収入を合計すると、260億ドルに達します。

ブラックリストの仕組み

リアルタイム評価・マッチング

登録された脚本家が脚本をアップロードすると、サイト上で一覧表示されます。閲覧・評価者は、一覧から興味のある脚本を検索・ダウンロードし、10段階のスコアで評価します。興味のある分野（コメディ、アクションなど）を事前に登録しておくと、それに合致する脚本が推薦される機能もあります。

評価スコアはベイズ推定を用いて平均値が算出され、リアルタイムで更新されたスコアは、閲覧・評価者と脚本家の両方が参照できます。脚本家は、ベイズ推定の評価スコアに加えて、単純平均評価スコア、検索閲覧数、ダウンロード数も確認できます。ブラックリストは、これらの数値を脚本家が自由に外部に公開することを許可しており、脚本家の営業活動を支援しています。

脚本に興味を持った閲覧・評価者は、脚本家に直接コンタクトを取り、サイト外で映画化の交渉を進めることができます。

利用者

脚本家は月額固定利用料を支払ってアカウント登録すれば誰でも利用できますが、必ずしも評価が付くとは限りません。オプション料金を追加で支払うことで、脚本のジャンルに応じて適切な閲覧・評価者を選定する仲介サービスもあります。

一方、アップロードされた脚本を読む閲覧・評価者は無料で利用できますが、サイト側の審査基準を通過した者に限定されます。閲覧・評価者は、映画スタジオ、制作プロダクション、タレント・エージェント、映画出資者、一部の俳優など、映画業界に精通し、映画製作に携わる業界関係者です。

ブラックリストがユーザー登録制を開始した時点で、閲覧・評価者としてアカウント登録を申請したのは250名でしたが、実際に承認されたのは40名未満でした。2017年10月時点では、約500名が閲覧・評価者として登録されています。

年次ランキング調査

会員制のリアルタイム評価・マッチングとは別に、年次投票も行われます。投票の基準は「最も気に入った脚本」であり、必ずしも「最優秀」であるとは限りません。投票者は1人あたり最大10作品まで投票できます。ランクインに必要な最低得票数は年によって異なります。ランキングは毎年12月の第2金曜日にサイト上で公開されます。

ブラックリストの評価

ブラックリストに登録された脚本は、第89回アカデミー賞（2017年2月発表）までに、通算264ノミネート、48受賞という実績を誇ります。『スラムドッグ$ミリオネア』、『英国王のスピーチ』、『アルゴ』、『スポットライト 世紀のスクープ』はアカデミー作品賞を受賞し、過去10年のアカデミー脚本賞およびアカデミー脚色賞を受賞した20作品のうち10作品がブラックリスト登録作品です。

映画業界メディアIndieWireは、「ブラックリストは洗練された公平なサイトとして位置付けられ、ランクインは無名の脚本家が一躍脚光を浴びるきっかけになる」と評価しています。しかし、「上位ランクイン作品が必ずしも映画化に繋がるとは限らず、映画化されても興行的な成功に直結するわけではない」とも指摘しています。

類似のサービス

InkTip (アメリカ合衆国)
The International Screenwriters' Association (アメリカ合衆国)
Project Greenlight Digital Studios (アメリカ合衆国)
ScreenCraft (アメリカ合衆国)
Spec Scout (アメリカ合衆国)
ステージ32 (アメリカ合衆国)
* Virtual Pitch Fest (アメリカ合衆国)

沿革

2005年、フランクリン・レナードはレオナルド・ディカプリオが設立した映画制作会社アッピアン・ウェイに勤務し、年間約700本の脚本に目を通していました。そこで、業界関係者にその年に読んで気に入った脚本を列挙してもらい、投票結果をリスト化して回答者に限定して配布しました。これがブラックリストの始まりです。当初、ランクイン作品リストは非公開でしたが、口コミで話題となり、一般公開されることになりました。

2011年10月には、年次調査だけでなく、リアルタイムの評価・マッチング機能がサイトに追加され、ユーザー登録制となりました。

レナードは今後、映画だけでなく、テレビ番組や演劇、ショートフィルムなどの脚本もプロジェクトの対象として拡大したいと考えています。

ブラックリストの名前について、レナードは「自分の名前を載せて欲しいと思えるようなブラックリストがあったらどうだろうか？」と語っています。また、名前の由来として、1940年代から50年代にかけてのハリウッド・ブラックリストと、彼自身がアフリカ系アメリカ人であるという事実を挙げています。「ブラック＝悪」というネガティブなイメージを払拭する意図でブラックリストと命名されました。

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