映画スタジオ

映画スタジオとは

映画スタジオは、映画を製作するための施設であり、撮影に必要な部屋、建物、サウンドステージ、事務所、倉庫、バックロットなどを含みます。英語では、映画の宣伝や配給を手掛ける会社を指すこともあります。

歴史

1893年、トーマス・エジソンがニュージャージー州に最初の映画スタジオ「エジソン・ブラック・マライア撮影所」を建設しました。このスタジオはタール紙で覆われた簡素な構造で、サーカスやボードビルの芸人などを撮影し、劇場などで上映しました。

その後、ニューヨークやシカゴにも映画スタジオが設立されましたが、1900年代初頭には、気候が良く日照時間の長いロサンゼルスに拠点を移す動きが始まりました。当時の照明技術では、太陽光が最適な光源だったためです。また、エジソンの特許支配から逃れるという目的もありました。

ハリウッド地区最初の映画スタジオは、1911年に開設された「ネスター・スタジオ」です。その後、多くのスタジオがハリウッドに移転し、カルバーシティ、バーバンク、スタジオシティなどに集積しました。

1920年代にはトーキー映画の登場とともに、映画業界の合併が進み、「5大スタジオ」と呼ばれるフォックス、MGM、パラマウント、RKO、ワーナー・ブラザースが製作から配給までを独占するスタジオ・システムが確立しました。ユニバーサル、コロンビア、ユナイテッド・アーティスツは「リトル・スリー」と呼ばれ、小規模スタジオは「ポヴァティ・ロウ」と呼ばれていました。

1948年、アメリカ政府がパラマウント社を独占禁止法違反で訴え、最高裁はパラマウントに映画館チェーンの売却を命じました。この判決によって、スタジオ・システムとハリウッド黄金期は終焉を迎え、プロジェクトごとにチームを編成する現在の製作方式へと移行しました。

1950年代には、テレビが映画スタジオの新たな収益源となり、番組制作にも使われるようになりました。

収益

映画スタジオの主な収益源は、劇場チケット、VHS・DVD販売、テレビ放映料です。

劇場チケットの売上は、上映期間とともにスタジオの取り分が減少し、平均で約55%になります。その後、VHS・DVD販売、ペイ・パー・ビュー、プレミアムチャンネル、ケーブルテレビ、ネットワークテレビ、シンジケーション市場という順で放映され、スタジオに収益が入ります。

初期の映画スタジオ

初期の映画スタジオとしては、アメリカのクリスティ・フィルム、ネスター・スタジオ、プレミアム・ピクチャー・プロダクションズ、ソラックス・スタジオ、ヴィクター・スタジオ、フランスのゴーモン、メリエス映画社、パテ兄弟社、イギリスのパインウッド・スタジオなどが挙げられます。

日本における撮影所

日本では、1908年に吉沢商会が東京に最初の撮影所を設置しました。その後、エム・パテー商会、福宝堂、横田商会が続き、1912年にはこれらが合併して日活が誕生しました。

1920年代には、スター俳優が独自の製作会社を設立する動きがありましたが、大手企業に吸収されていきました。撮影所の立地は、東京と京都に二分されていますが、初期には大阪や兵庫、神奈川、奈良、千葉にも存在しました。また、貸しスタジオという概念も存在していました。

1930年代に入ると、トーキー映画の登場により、近代的な撮影所システムが確立しました。監督やスタッフ、俳優は映画会社と専属契約を結び、撮影所では複数の作品が同時進行で制作されていました。

1970年代には、映画産業の斜陽化とともに撮影所システムは崩壊し、貸しスタジオとして独立プロやテレビドラマの撮影に使われるようになりました。

21世紀に入り、現在稼働中の日本の映画撮影所は、東宝スタジオ、松竹京都撮影所、東映京都撮影所、東映東京撮影所、角川大映スタジオ、日活撮影所などがあります。また、川崎5スタジオやみろくの里など、特色のある撮影所も存在します。

日本の主な撮影所

初期の撮影所としては、吉沢商会目黒行人坂撮影所、エム・パテー商会大久保撮影所、福宝堂日暮里撮影所、横田商会二条城撮影所などがありました。

天活系では、東洋商会東京日暮里撮影所、天然色活動写真小阪撮影所、天然色活動写真巣鴨撮影所などがありました。

帝国キネマ系では、帝国キネマ蘆屋撮影所、帝国キネマ長瀬撮影所、阪東妻三郎プロダクション太秦撮影所、第一映画撮影所などがありました。

マキノ系では、牧野教育映画製作所、マキノ・プロダクション御室撮影所、マキノ・トーキー撮影所などがありました。

その他の初期の撮影所としては、大正活動映画撮影所、甲陽キネマ撮影所、吾嬬撮影所、連合映画芸術家協会撮影所、月形プロダクション撮影所、嵐寛寿郎プロダクション太秦撮影所、大日本(東洋)自由映画プロダクション・阪東関東撮影所、不二映画社富士スタジオ、日本キネマ撮影所、入江プロダクション撮影所などがありました。

大手成立以降では、日活、大映、東映、松竹、東宝、新東宝などの撮影所がありました。現在も稼働している撮影所もあれば、閉鎖された撮影所もあります。

脚注

[1] PBS Frontline, "the monster that ate hollywood"

関連項目

スタジオ (映像撮影)
スタジオ (映像編集)
スタジオ・システム
日本映画#歴史

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