ブラック・アーク

ブラック・アーク・スタジオ：レゲエの伝説を育んだ創造の聖地

ブラック・アーク・スタジオは、レゲエとダブのプロデューサーとして知られるリー・スクラッチ・ペリーが所有していた伝説的なレコーディングスタジオです。ジャマイカの首都キングストンの郊外、ワシントン・ガーデンズにある彼の自宅の庭に建てられました。スタジオの設備は、ペリー自身が用意した時代遅れの機材が中心で、非常に簡素なものでした。

しかし、その簡素さとは裏腹に、ブラック・アーク・スタジオは、1970年代後半のジャマイカ、そして世界の音楽シーンにおいて、革新的なサウンドと録音技術を生み出す中心地となりました。リー・ペリーの独創的な才能は、最新の機材を誇る他のスタジオを凌駕するほどの、唯一無二の音響空間を作り出したのです。

創造性を刺激する奇抜なアイディア

ペリーは、4トラックの基本的な機材を駆使し、音響効果、オーバーダブ、そして緻密なタイミングを組み合わせることで、驚くべきサウンドを生み出しました。その発想は奇抜で、ヤシの木の下にマイクを埋めてバスドラムの効果を試したり、ドラムブースを金網で囲んで独特の音響効果を生み出したりしました。また、割れたガラス、不気味なため息、金切り声、赤ん坊の泣き声、牛のおもちゃの音など、日常の音をサンプリングして、独特のサウンドスケープを構築しました。これらの斬新なテクニックが、ブラック・アーク・スタジオの創造的なサウンドを定義づけたのです。

謎に包まれた焼失

しかし、ブラック・アーク・スタジオの輝かしい時代は長くは続きませんでした。1978年、スタジオは火災により全焼してしまいます。原因は漏電とされていますが、一説には、ペリー自身が火を放ったとも言われています。ブラック・アーク時代末期のペリーは、精神的に不安定な状態にあり、アルコールとガンジャに溺れる日々を送っていました。かつて多くのアーティストで賑わったスタジオは、見る影もなく荒廃してしまったのです。

ブラック・アークの遺産

ブラック・アーク・スタジオは失われてしまいましたが、そこで生まれた音楽は、今もなお世界中の音楽ファンを魅了し続けています。ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ、スーザン・カドガン、アップセッターズ、マックス・ロメオ、ジュニア・マーヴィンなど、数多くのアーティストがブラック・アークで録音を行い、数々の名作が生まれました。リー・ペリーの革新的な精神と、ブラック・アーク・スタジオが生み出した独特のサウンドは、レゲエ音楽の歴史に深く刻まれています。

ブラック・アークを失った後も、ペリーは制作活動を続け、その音楽的探求は止まることがありませんでした。ブラック・アーク・スタジオは、レゲエ音楽における創造性の象徴として、これからも語り継がれていくでしょう。

主なブラック・アーク作品

シングル
ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ - Smile Jamaica (1978.5.26)

アルバム
スーザン・カドガン - Susan Cadogan (Hurt So Good) (1976)
アップセッターズ - Super Ape (1976.8)
マックス・ロメオ - War ina Babylon (1976)
ジャー・ライオン - Colombia Colly (1976)
ジュニア・マーヴィン - Police and Thieves (1977.4.1)
ヘプトーンズ - Party Time (1977)
コンゴス - Heart of the Congos (1977)
ジョージ・フェイス - Super Eight (1977)

V.A.
リー・ペリー - Cutting Razor: Rare Cuts From The Black Ark (2003)
* Lee 'Scratch' Perry - The Black Ark Years (2010)

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