ブラック・ドッグ

レッド・ツェッペリン「ブラック・ドッグ」の詳細解説

「ブラック・ドッグ」は、イギリスのロックバンド、レッド・ツェッペリンが1971年に発表した楽曲です。アルバム『レッド・ツェッペリン IV』のA面1曲目に収録され、その独特な構成と力強いサウンドで、今日に至るまで多くのファンを魅了し続けています。

楽曲の誕生

この曲は、ジョン・ポール・ジョーンズの発案による複雑なリフが基になっています。ジョーンズ自身は、「マディ・ウォーターズ風の曲を作りたかった」と語っており、ブルースへの敬愛が込められています。作詞・作曲は、ジョン・ポール・ジョーンズ、ジミー・ペイジ、ロバート・プラントの3人によって手がけられました。

楽曲構成の妙

「ブラック・ドッグ」の大きな特徴は、その複雑なリズム構成にあります。聴覚上は非常に複雑に感じられますが、概念化するとA→B→A'→C→Dの構成が2回繰り返されていると解釈できます。主部（AおよびA'）では、プラントのボーカルと、他の3人の楽器によるリフが交互に掛け合うように演奏されます。このボーカルメロディは、フリートウッド・マックの「Oh, Well」からヒントを得たものであり、ペイジもそれを認めています。

ジミー・ペイジのギターサウンド

ペイジのギターサウンドは、レスポールを直接ミキシング・コンソールに接続することで得られた、いわゆる「プレーン・トーン」が使用されています。これにより、独特の生々しいサウンドが生み出されています。ただし、ギターソロに関しては、レスリースピーカーを用いて出力したのではないかという説もあります。

曲名の由来

曲名は、レコーディング当時のスタジオがあったヘッドリィ・グランジの周囲をうろついていた黒い野良犬（ゴールデン・レトリバー）に由来します。ただし、この犬と歌詞の内容には直接的な関係はありません。歌詞に登場する「Eyes that shine burning red」は、イギリス各地に伝えられる妖精犬「ブラックドッグ」のイメージを反映したものと考えられます。

歌詞の意味

歌詞の内容は、女性への愛や欲望を露骨な表現で語っています。しかし、プラントは後に「自分の言いたいことは誤解されている」とインタビューで語るなど、歌詞の解釈については様々な議論があります。

ステージパフォーマンス

「ブラック・ドッグ」は、『レッド・ツェッペリン IV』の発売に先駆けて、1971年3月5日のベルファスト公演で初演されました。この日は「天国への階段」も初演されており、ファンにとっては特別な日となりました。以降、「ブラック・ドッグ」は、レッド・ツェッペリンのライブにおいて、基本的に常にセットリストに組み込まれる人気曲となりました。

1973年のアメリカツアーでは、「ロックン・ロール」「祭典の日」と共にコンサート開幕のメドレーを構成しました。1975年にはアンコール曲となり、1977年にはほとんど演奏されませんでしたが、1979年からは再びレパートリーに復帰しています。2007年のロンドンO2アリーナでの再結成ギグでも演奏され、往年のファンを熱狂させました。

ライブ演奏時には、「アウト・オン・ザ・タイルズ」のイントロを合体させて披露することが多く、より一層曲の魅力を引き立てていました（ただし、1973年の北米ツアーでは、「ブリング・イット・オン・ホーム」のイントロを合体させていました）。

「ブラック・ドッグ」は、レッド・ツェッペリンの音楽性を象徴する一曲であり、その革新的なサウンドと構成は、今もなお多くのミュージシャンに影響を与え続けています。

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