ブラッズ

ブラッズ：アメリカを代表するストリートギャング

ブラッズ（Bloods）は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点とする大規模なストリートギャングです。シンボルカラーは赤色で、五芒星をシンボルとして使用することもあります。彼らの名前の由来には諸説あり、若い黒人ギャングを指す「ヤングブラッド」から来たという説や、ベトナム戦争の黒人帰還兵がお互いを「ブラッズ」（兄弟）と呼び合ったことに由来するという説があります。

クリップスとの対立

ブラッズは、クリップスと並んで「二大黒人ギャング」あるいは「二大ストリートギャング」と称されており、激しい抗争を繰り広げてきました。クリップスがバンダナをズボンの左側に垂らすのに対し、ブラッズは右側に垂らすのが特徴です。また、クリップスはブラッズの頭文字である「B」を、ブラッズはクリップスの頭文字である「C」をそれぞれ認めないという、互いを敵視する姿勢を持っています。ブラッズのメンバーは、クリップスを軽蔑して「Crab」（蟹）と呼ぶことがあり、これはクリップス同士の内紛を蟹の共食いに例えたものです。

歴史

ブラッズは、1972年にロサンゼルスで結成されました。その背景には、1969年に結成されたクリップスの勢力拡大に対する対抗意識がありました。コンプトンのパイルズを中心に、LAブリムズ、ワッツのグリーンジャケッツ（現バウンティー・ハンター・ブラッズ）など、多くのギャング組織が連合して結成されました。当初からクリップスとの抗争は激しく、その後、勢力を拡大。1970年代後半にはサンディエゴやフレズノなどカリフォルニア州各地に、1980年代半ばにはワシントン州、オレゴン州、アリゾナ州、ネバダ州、テキサス州などにも進出しました。特にアリゾナのセットは千人を超える大勢力だったとされています。

1980年代後半には、国境を越えてカナダのバンクーバーにも進出し、ベリーズ系メンバーが多いローリン20'sネイバーフッドブラッズなどを中心にベリーズにも進出しました。さらに、軍内のメンバーを通じてグアムにも勢力を拡大しています。1990年代に入ると、東海岸でもユナイテッド・ブラッド・ネーション（UBN）が結成され、全米にブラッズの支部が広がりました。ある地域でギャングがクリップス化すると、その対抗組織がブラッズになる傾向があり、全米各地で大小の抗争が繰り広げられ、一説には2万人近い死者を出したとも言われています。1990年代にはクレンショー地区でエイティーンスストリートギャングとの抗争も発生しました。

1993年には、ロサンゼルス暴動後の混乱の中、ワッツ休戦協定が結ばれましたが、メンバーの殺害により破棄されました。その後、2010年代まで大規模な抗争は停滞していますが、セット間の散発的な争いは続いています。

東海岸での展開

東海岸では、1993年にニューヨークでユナイテッド・ブラッド・ネーション（UBN）が結成されました。これは、既存の黒人ギャング組織が、ラテンキングスやトリニタリオスといったヒスパニック系ギャングに対抗するためにブラッズに転向した連合体です。UBNの結成には、ロサンゼルスのブラッズと繋がりを持つオマー・ポーティーが関与し、ブラッズから承認を得て設立されました。当初は7つの組織の連合体でしたが、後にセックス・マネー・マーダーなどの有力組織も加わり、ニューヨーク外にも勢力を拡大しました。東海岸全体で少なくとも7千人以上の規模を誇ると言われており、これらを含めたブラッズの総数は2万人近くに達すると推測されています。しかし、ロサンゼルスから進出してきたブラッズ本家とは少なからず衝突していることが確認されており、必ずしも友好的な関係とは言えません。

ブラッズ出身の著名人

多くの著名人がブラッズのメンバー、または関係者として知られています。

ザ・ゲーム：シダー・ブロック・パイル出身
カーディ・B：ユナイテッド・ブラッド・ネーション内のマック・ボーラー・ブリムズに所属
DJ・クイック：ツリー・トップ・パイル出身
B・リアル：マッド・スワンズ・ブラッズ出身
セン・ドッグ：ネイバーフッド・ファミリー・ブラッズ出身
マック・10：クイーン・ストリート・ブラッズ出身
YG：ツリー・トップ・パイル所属
ブーヤー・トライブ：ウエストサイド・パイル出身
ヤング・サグ：ユナイテッド・ブラッド・ネーション内のセックス・マネー・マーダー出身
チャールズ・"クレイジー・ホース"・ベネット
シュグ・ナイト：ブラッズ出身ではないが、パイルズとの関係が深く、デス・ロウ時代にバウンティー・ハンター・ブラッズが彼の金主だった
2パック：ブラッズ出身ではないが、パイルズと関係が深かった
tekashi・6ix9ine：ユナイテッド・ブラッド・ネーション内のナイン・トレイ・ギャングスターズのアソシエイト
ケンドリック・ラマー：パイルズのアソシエイトで、父親はシカゴのギャングスター・ディサイプルズに所属

ブラッズを題材にした映画

カラーズ 天使の消えた街 (1988年)

関連書籍

ソーレン・ベイカー『ギャングスター・ラップの歴史 スクーリー・Dからケンドリック・ラマーまで』塚田桂子訳・解説、DU BOOKS、2019年9月。


ブラッズは、アメリカ社会におけるギャング文化の一翼を担い、その存在は音楽や映画にも影響を与えてきました。彼らの歴史は、アメリカの都市における社会問題と深く結びついており、多くの人々にとって複雑なテーマです。

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