ブランル

ブランル (Branle) - 16世紀フランス発祥の集団舞踊

ブランルは、16世紀前後のヨーロッパ、とりわけフランスで広く親しまれた集団舞踊であり、その舞踊に用いられた楽曲も指します。その語源は、フランス語で「揺れる」という意味を持つ branler に由来するとされています。

ブランルの起源と特徴

もともとは、庶民が野外で踊っていたものが、洗練された宮廷舞踊であるバス・ダンスのステップの一つとして取り入れられました。その後、独立した舞踊として確立し、フランスを中心にヨーロッパ各地で流行しました。

ブランルの基本は、男女のペアが輪になって踊る輪舞の一種です。パヴァーヌやバス・ダンスのような格式ばった雰囲気はなく、陽気で親しみやすいステップが特徴です。洗練された宮廷舞踊とは異なり、やや田舎風で素朴な踊りとも評されますが、その気軽さから、身分に関わらず多くの人々に愛されました。特に、格式ばらない祝祭の場で、人々が一緒になって楽しむ踊りとして広まりました。

ブランルの形式

トワノ・アルボの教本によると、ブランルは通常、3〜4曲の異なるテンポの楽曲を組み合わせて演奏されました。これらの楽曲は、あたかも組曲のように連続して演奏され、踊り手は曲調に合わせてステップを変えながら踊りました。一般的な構成は以下の通りです。

1. ブランル・ドゥーブル (Branle Double): 中庸のテンポで演奏される偶数拍子の曲。ダブルステップが特徴的です。
2. ブランル・サンプル (Branle Simple): ブランル・ドゥーブルと同様に中庸のテンポの偶数拍子ですが、ステップが異なります。
3. ブランル・ゲイ (Branle Gay): 3拍子のやや速い曲。踊り手は2拍ステップを踏み、1拍休止しながら左回りに進みます。
4. ブルゴーニュ風ブランル (Branle de Bourgogne): 最後に演奏される、かなり速いテンポの偶数拍子の曲。ブランル・ドゥーブルと同じステップを、しばしば手の動きを加えながら賑やかに踊ります。地域によっては、地元独自のブランルが演奏されることもありました。

ブランルの多様な楽しみ方

ブランルは、世代を超えて人々が交流する場でもありました。例えば、曲が終わるごとに若いペアに交代していくことで、様々な年齢層の人々が同じ踊りを共有しました。また、小道具を使って踊り、それを手渡すことで自分の思いを相手に伝えるといった趣向も凝らされました。「たいまつのブランル」のように、現在にまで伝わっている楽曲も存在します。

ブランルの現代への継承

ブランルの楽曲は、17世紀初頭にミヒャエル・プレトリウスが編纂した音楽集「テルプシコーレ」などに多数収録されています。今日では、リコーダーアンサンブルなどのレパートリーとして様々な編曲がなされ、広く親しまれています。古の旋律は、現代においても人々の心を魅了し続けています。

ブランルは、単なる舞踊にとどまらず、当時の人々の生活や文化、そして世代を超えた交流を象徴するものでした。その陽気な雰囲気と親しみやすさは、現代においても多くの人々に愛され、様々な形で継承されています。

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