ブラン城

ブラン城：歴史と神秘に包まれたルーマニアの古城

ルーマニア南部、トランシルバニア地方のブラショヴ県に位置するブラン城は、中世の面影を色濃く残す歴史的建造物です。険しい山々に囲まれたその立地は、古くから要塞として重要な役割を果たしてきました。1377年の文書に初めて言及され、それ以前には13世紀初頭に木造の要塞が存在したと推測されています。

王家と都市を繋ぐ歴史の軌跡

当初はハンガリー王家の所有物であったブラン城は、トランシルバニア地方の統治者によって管理され、近隣地域との交易の関所としての役割も担っていました。その後、ワラキア公国との同盟関係を背景に、ワラキア公ミルチャ老公の手に渡る時期もありました。15世紀以降はブラショフ市が所有し、管理運営を行っていました。

1920年、ルーマニア統一への貢献を称え、ブラショフ市議会からルーマニア王妃マリアへ寄贈されました。王妃は城を改修し、自身の住居として使用。ルーマニアの伝統的な家具や調度品で飾られ、独特の雰囲気を醸し出していました。しかし、1948年の王室追放後、共産主義政権下で国有化されました。

その後、博物館として一般公開されたブラン城ですが、1980年代後半には大規模な修復工事が行われ、城の保存と修復に尽力する人々の努力が凝縮されています。2006年には、マリア王妃の子孫であるドミニク・ハプスブルク＝ロートリンゲン氏らに返還されましたが、その後ルーマニア政府に売却されました。

博物館として、そして観光地として

現在、ブラン城は博物館として公開されており、城内には陶器、家具、武器・甲冑など、貴重なコレクションが展示されています。敷地内には、伝統的な農村建築を展示する野外博物館も併設されています。ハロウィンイベントなども開催され、多くの人々を魅了しています。2012年には、トリップアドバイザーの「世界の名城25選」にも選ばれ、その魅力は世界的に認められています。近年では、日本の職人が城内の修復に携わったことも話題となりました。

ドラキュラ伝説との関わり

小説『吸血鬼ドラキュラ』で描かれたドラキュラ城のモデルとして知られるブラン城ですが、実際にはドラキュラのモデルとされるヴラド・ツェペシュ（ヴラド3世）は、この城に住んでいませんでした。ヴラド3世が居住していたのは、トゥルゴヴィシュテやポエナリ城であるとされています。ブラム・ストーカー自身の創作においても、イギリスのスレインズ城がモデルとなったという説もあります。ブラン城は、小説の世界観と現実の歴史が交錯する、興味深い存在と言えるでしょう。

アクセスと情報

ブラン城は、ブラショフから約30kmの場所に位置し、国道73号線沿いにあります。アクセスも良好で、ルーマニア観光の際にはぜひ訪れたい場所の一つです。城の歴史や文化に触れ、神秘的な雰囲気を味わってみてください。現在も、その歴史的価値と観光地としての魅力を両立させ、多くの人々に愛され続けています。

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