ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズ
ブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズは、ラグビーユニオンにおいて特別な存在です。イングランド、スコットランド、ウェールズ、そしてアイルランドという、いわゆる「ホームユニオン」を構成する4協会から、そのシーズンのトッププレイヤーが選抜されて結成される、期間限定の合同チームです。その愛称は「ライオンズ」として広く親しまれています。
ライオンズの活動の主な目的は、南半球のラグビー強豪国である南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドへの遠征です。過去には第二次世界大戦前にアルゼンチンへの遠征も二度行われています。
遠征の頻度は時代とともに変化してきました。1970年代から1980年代にかけては概ね3年ごとに行われていましたが、1990年代にラグビーワールドカップが始まり4年周期で開催されるようになった後は、その2年後にずらす形で4年ごとに、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドのいずれかの国を訪問しています。
ライオンズのエンブレムには、参加する4協会の象徴がデザインされています。イングランド代表の薔薇、スコットランド代表のアザミ、ウェールズ代表のプリンス・オブ・ウェールズの羽根、そしてアイルランド代表のシャムロックが一体となって描かれています。
ユニフォームにも、各国の代表カラーが取り入れられています。ジャージはウェールズの赤、パンツはイングランドの白、そしてソックスはスコットランドの青とアイルランドの緑が組み合わされています。
ライオンズが遠征先国の代表チームと戦うテストマッチでは、一般的な代表チームのように独自のアンセムが演奏されることはなく、試合前には対戦相手国の国歌のみが流れます。2005年の遠征時に「The Power of Four」というチームアンセムが制定されたことがありましたが、選手やファンの間で定着せず、その遠征限りで廃止されました。
ラグビー選手にとって、ライオンズのメンバーに選出されることはキャリアにおける最高の栄誉の一つとされています。遠征先国のナショナルチームとの試合はテストマッチとして公式に認められ、ライオンズの選手も所属するそれぞれの国の代表キャップを獲得することができます。
ライオンズの起源は1888年に遡ります。クリケットのプロモーターであったアルフレッド・ショーとアーサー・シュルーズベリー、そしてアンドリュー・ストッダートが中心となり、イングランドのラグビーチームによる南半球への遠征が企画されました。彼らはイングランドラグビー協会（RFU）に後援を求めましたが、営利目的の企画であるとして支援を得ることはできませんでした。
最初の遠征チームは1888年3月にイギリスを出発し、オーストラリアとニュージーランドに滞在しました。わずか22名の選手団で、同年11月に帰国するまでに合計53試合という過酷な日程を戦いました。この時のチームはイングランド、スコットランド、ウェールズの選手のみで構成されており、アイルランドの選手は含まれていませんでした。
ホームユニオン全4協会からの選手がチームに参加するようになったのは、1910年のアルゼンチン遠征（通算8回目の遠征）が初めてです。
ライオンズの遠征には、政治的な影響が及んだこともあります。1986年に予定されていた南アフリカ遠征は、当時の南アフリカにおけるアパルトヘイト政策に対する国際的な非難の高まりを受けて中止されました。これにより、南アフリカへの遠征は1997年に再開されるまで17年間の空白が生じました。
近年では、伝統的な南半球の強豪国とのテストマッチシリーズに加え、遠征の前後や期間中に他の国の代表チームやクラブチームなどとの試合が組まれることがあります。例えば、2005年のニュージーランド遠征前にはアルゼンチン代表と対戦し、2013年のオーストラリア遠征中には香港でバーバリアンズと対戦しました。これはライオンズにとって初めてのアジアでの試合となりました。
南アフリカへの遠征シリーズに先立ち、2021年6月にはスコットランドのエディンバラで日本代表との試合が行われました。日本代表にとっては、ラグビーワールドカップ2019以来約1年8ヶ月ぶりとなるテストマッチでした。試合はライオンズが28対10で勝利しましたが、試合後半は日本代表も奮闘し得点を重ねました。この試合では、開始早々にキャプテンを務めていたアラン=ウィン・ジョーンズ選手が肩を負傷し、南アフリカ遠征前半の欠場を余儀なくされるというアクシデントも発生しました。
この日本代表戦は「ライオンズ1888カップ」と名付けられ、専用のトロフィーが制作されました。このカップは、今後の遠征における前哨戦の一環として継続して開催される予定です。
2025年の遠征では、オーストラリアへ向かう前に、アイルランドでアルゼンチン代表との試合が組まれており、これが2回目の「ライオンズ1888カップ」となります。
オーストラリア遠征自体は、2025年6月28日から8月2日にかけて実施される予定です。この遠征では、ホスト国であるオーストラリア代表とのテストマッチ3試合に加え、国内のスーパーラグビーチームとの4試合、さらにはオーストラリアとニュージーランドの合同選抜チーム「ANZAC XV」（1989年以来36年ぶりの結成）との対戦など、合計9試合が予定されています。
ライオンズの遠征は、その選抜の難しさ、伝統、そして南半球の強豪国との歴史的な対戦から、世界中のラグビーファンにとって常に注目のイベントとなっています。選手たちはそれぞれの所属チームや国の垣根を越えて結束し、約1ヶ月半にわたる遠征でラグビーの真髄を体現します。
概要
ライオンズの活動の主な目的は、南半球のラグビー強豪国である南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドへの遠征です。過去には第二次世界大戦前にアルゼンチンへの遠征も二度行われています。
遠征の頻度は時代とともに変化してきました。1970年代から1980年代にかけては概ね3年ごとに行われていましたが、1990年代にラグビーワールドカップが始まり4年周期で開催されるようになった後は、その2年後にずらす形で4年ごとに、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドのいずれかの国を訪問しています。
エンブレムとユニフォーム
ライオンズのエンブレムには、参加する4協会の象徴がデザインされています。イングランド代表の薔薇、スコットランド代表のアザミ、ウェールズ代表のプリンス・オブ・ウェールズの羽根、そしてアイルランド代表のシャムロックが一体となって描かれています。
ユニフォームにも、各国の代表カラーが取り入れられています。ジャージはウェールズの赤、パンツはイングランドの白、そしてソックスはスコットランドの青とアイルランドの緑が組み合わされています。
アンセム
ライオンズが遠征先国の代表チームと戦うテストマッチでは、一般的な代表チームのように独自のアンセムが演奏されることはなく、試合前には対戦相手国の国歌のみが流れます。2005年の遠征時に「The Power of Four」というチームアンセムが制定されたことがありましたが、選手やファンの間で定着せず、その遠征限りで廃止されました。
選手の栄誉
ラグビー選手にとって、ライオンズのメンバーに選出されることはキャリアにおける最高の栄誉の一つとされています。遠征先国のナショナルチームとの試合はテストマッチとして公式に認められ、ライオンズの選手も所属するそれぞれの国の代表キャップを獲得することができます。
歴史
ライオンズの起源は1888年に遡ります。クリケットのプロモーターであったアルフレッド・ショーとアーサー・シュルーズベリー、そしてアンドリュー・ストッダートが中心となり、イングランドのラグビーチームによる南半球への遠征が企画されました。彼らはイングランドラグビー協会（RFU）に後援を求めましたが、営利目的の企画であるとして支援を得ることはできませんでした。
最初の遠征チームは1888年3月にイギリスを出発し、オーストラリアとニュージーランドに滞在しました。わずか22名の選手団で、同年11月に帰国するまでに合計53試合という過酷な日程を戦いました。この時のチームはイングランド、スコットランド、ウェールズの選手のみで構成されており、アイルランドの選手は含まれていませんでした。
ホームユニオン全4協会からの選手がチームに参加するようになったのは、1910年のアルゼンチン遠征（通算8回目の遠征）が初めてです。
近年の活動
ライオンズの遠征には、政治的な影響が及んだこともあります。1986年に予定されていた南アフリカ遠征は、当時の南アフリカにおけるアパルトヘイト政策に対する国際的な非難の高まりを受けて中止されました。これにより、南アフリカへの遠征は1997年に再開されるまで17年間の空白が生じました。
近年では、伝統的な南半球の強豪国とのテストマッチシリーズに加え、遠征の前後や期間中に他の国の代表チームやクラブチームなどとの試合が組まれることがあります。例えば、2005年のニュージーランド遠征前にはアルゼンチン代表と対戦し、2013年のオーストラリア遠征中には香港でバーバリアンズと対戦しました。これはライオンズにとって初めてのアジアでの試合となりました。
2021年（南アフリカ遠征）
南アフリカへの遠征シリーズに先立ち、2021年6月にはスコットランドのエディンバラで日本代表との試合が行われました。日本代表にとっては、ラグビーワールドカップ2019以来約1年8ヶ月ぶりとなるテストマッチでした。試合はライオンズが28対10で勝利しましたが、試合後半は日本代表も奮闘し得点を重ねました。この試合では、開始早々にキャプテンを務めていたアラン=ウィン・ジョーンズ選手が肩を負傷し、南アフリカ遠征前半の欠場を余儀なくされるというアクシデントも発生しました。
この日本代表戦は「ライオンズ1888カップ」と名付けられ、専用のトロフィーが制作されました。このカップは、今後の遠征における前哨戦の一環として継続して開催される予定です。
2025年（オーストラリア遠征）
2025年の遠征では、オーストラリアへ向かう前に、アイルランドでアルゼンチン代表との試合が組まれており、これが2回目の「ライオンズ1888カップ」となります。
オーストラリア遠征自体は、2025年6月28日から8月2日にかけて実施される予定です。この遠征では、ホスト国であるオーストラリア代表とのテストマッチ3試合に加え、国内のスーパーラグビーチームとの4試合、さらにはオーストラリアとニュージーランドの合同選抜チーム「ANZAC XV」（1989年以来36年ぶりの結成）との対戦など、合計9試合が予定されています。
ライオンズの遠征は、その選抜の難しさ、伝統、そして南半球の強豪国との歴史的な対戦から、世界中のラグビーファンにとって常に注目のイベントとなっています。選手たちはそれぞれの所属チームや国の垣根を越えて結束し、約1ヶ月半にわたる遠征でラグビーの真髄を体現します。
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