バーバリアンズ

バーバリアン・フットボール・クラブ

概要と伝統

「バーバリアン・フットボール・クラブ」（Barbarian Football Club）は、1890年にイングランドで創設された、非常にユニークなラグビーユニオンクラブです。「バーバリアンズ」の通称で知られ、「バーバーズ」とも呼ばれます。特定のホームグラウンドを持たず、その活動は試合や遠征の際に、世界中から厳選されたトップ選手たちを招待して一時的にチームを編成するという形式で行われます。メンバーには最低1名、国代表経験のないノンキャップ選手を含めるという伝統があり、これは創設以来受け継がれるクラブの哲学の一つです。

バーバリアンズのジャージは、黒と白の太い横縞にクラブ名の頭文字を重ねたエンブレムがあしらわれています。そして、最も象徴的な伝統の一つがソックスです。選手たちは自身の所属クラブや出身校のソックスを着用することが許されており、左右で異なるソックスを履く選手が多いことも、多様なバックグラウンドを持つ個々の選手を尊重するクラブの姿勢を表しています。彼らのプレースタイルは、エンターテイメント性を重視した攻撃的な「オープンラグビー」を信条としています。

活動と歴史的な瞬間

バーバリアンズは主に、英国へ遠征してきた強豪国の代表チームや国内外の名門クラブと対戦します。チャリティーマッチにも積極的に参加しており、その試合は常に注目を集めます。クラブの歴史には、ラグビー史に名を刻む瞬間があります。例えば1973年、ニュージーランド代表（オールブラックス）戦で生まれたガレス・エドワーズ選手のトライは、「ラグビー史上最高のトライ」として今も語り継がれています。

日本との関わりもあり、1996年には阪神・淡路大震災復興支援チャリティーマッチのために来日しました。2011年からはKillik & Co社のスポンサーシップにより「Killik Cup」として定期的に試合が行われています。また、ラグビーにおける女性の活躍を推進するため、2017年には女子バーバリアンズが結成され、国際試合も行うようになっています。

一方で、新型コロナウイルスのパンデミックはクラブの活動にも影響を与えました。2020年10月に予定されたイングランドXV戦は一部選手の規律違反で、2021年11月のサモア代表戦もチーム関係者のコロナ陽性で、いずれも直前で中止となる不測の事態に見舞われました。

類似名称チームと世界選抜との違い

バーバリアンズの「招待制チーム」というコンセプトは、世界各地で多くのチームに影響を与え、「○○バーバリアンズ」と名乗るクラブも存在します。しかし、これらはバーバリアンズ本体とは直接的な関連はありません。例えばフランスの「フレンチ・バーバリアンズ」や、日本国内の様々なクラブチームなどがこれにあたります。

また、ワールドラグビーなどが企画する「世界選抜（World XV）」も招待制で一流選手が集まるチームですが、これはクラブチームであるバーバリアンズとは異なる性質を持ちます。主に国代表の強化や記念試合を目的として編成され、組織形態が異なります。報道などで混同されることもありますが、両者は区別されるべき存在です。ただし、2023年にはバーバリアンズと世界選抜が直接対戦するという珍しい試合も行われました。

日本国内にも、地域リーグなどで活動する「バーバリアンズ」を冠するクラブチームが複数存在します。また、日本のラグビー史を遡ると、1899年創立の慶應義塾大學ラグビー部の前身の一つに「ゼ・バーベリアン」という同好会があった記録も残っています。

日本人選手の選出実績

バーバリアンズのメンバーに選ばれることは、その選手のキャリアにおける大きな功績と見なされます。日本から初めてバーバリアンズに選出されたのは、1992年の林敏之選手です。その後も、元木由記雄選手、アンドリュー・マコーミック選手、田中史朗選手、ホラニ龍コリニアシ選手、藤田慶和選手といった多くの日本人選手が招集されてきました。特に田中選手や藤田選手は、バーバリアンズの伝統に則り、所属チームや出身校の異なるソックスを着用してプレーしています。女子バーバリアンズには、2019年に齊藤聖奈選手と南早紀選手が選ばれました。

近年も、2023年の世界選抜戦に出場した山本凱選手をはじめ、同年秋には複数の日本人選手がクラブとの対戦に招待されています。そして、2024年には堀江翔太選手が、現役最後の試合としてバーバリアンズの一員としてプレーすることが大きな話題となりました。このように、バーバリアンズは日本のラグビーとも深く関わりながら、その独自の魅力と伝統を世界に示し続けています。

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