ブリューワー・ドブソン循環

ブリューワー・ドブソン循環：成層圏における大気の大移動

ブリューワー・ドブソン循環（Brewer-Dobson circulation、BD循環）は、地球の成層圏下部（高度約10～30キロメートル）で起こる大規模な大気循環です。成層圏循環、成層圏子午面循環、あるいは単に子午面循環と呼ばれることもあります。この循環は、地球規模のオゾン分布や大気組成に大きな影響を与えているため、気象学や地球科学の分野において重要な研究対象となっています。

循環の流れ

ブリューワー・ドブソン循環は、主に以下の2つの流れから構成されています。

1. 赤道域からの流れ: 赤道付近の対流圏界面付近で上昇した空気は、成層圏に侵入し、中緯度に向かってゆっくりと移動します。この流れは、熱帯上空で生成されたオゾンを中緯度、ひいては極地方へと輸送する主要な経路となります。
2. 極域からの流れ: 南北両極の上空では、下降気流が観測されます。この下降気流によって、極地方の成層圏から中緯度へと空気が流れ込みます。この流れは、極地方で蓄積された物質を中緯度へと輸送する役割を果たします。

これらの流れは、地球の自転や温度差によって生じる風の影響を大きく受けています。また、季節変化も循環のパターンに影響を与えます。夏極の上空では上昇流、冬極の上空では下降流が卓越し、それぞれ中層大気の冬半球向き循環と関連しています。

オゾン輸送における役割

ブリューワー・ドブソン循環は、オゾンの地球規模の分布を決定づける上で極めて重要な役割を果たしています。熱帯上空で生成されたオゾンは、この循環によって極地方へと輸送され、オゾン層を形成します。オゾン層は、有害な紫外線から地球上の生命を守っているため、ブリューワー・ドブソン循環の理解は、地球環境の保護においても不可欠です。

歴史

ブリューワー・ドブソン循環は、アラン・ブリューワー（1949年、水蒸気の移動パターンから）とゴードン・ドブソン（1956年、オゾンの移動パターンから）によって、それぞれ独立に発見されました。両者の名前を冠して「ブリューワー・ドブソン循環」と呼ばれ、その頭文字を取って「BD循環」とも略されます。彼らの研究は、成層圏における大気循環の理解を深める上で大きな貢献を果たしました。

関連する現象

ブリューワー・ドブソン循環は、成層圏における他の気象現象とも密接に関連しています。例えば、成層圏突然昇温や極渦といった現象は、ブリューワー・ドブソン循環の変動に影響を受けることが知られています。これらの現象の研究を通じて、ブリューワー・ドブソン循環のより詳細な理解が深まっています。

まとめ

ブリューワー・ドブソン循環は、地球規模の大気循環システムにおける重要な要素であり、オゾン層の維持や地球環境の変動を理解する上で不可欠な概念です。今後の研究によって、そのメカニズムや気候変動への影響などがさらに解明されることが期待されます。

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