成層圏

成層圏について

成層圏（せいそうけん、英: stratosphere）は、地球の大気の構造の一部で、対流圏と中間圏の間に位置しています。この層は、地表から約8kmから始まり、赤道付近では最大17km、成層圏の最上部はおよそ50kmまで広がっています。成層圏の特異な点は、温度が高度とともに上昇することです。対流圏や中間圏では通常、飽和気温が高くなるため、上昇するほど気温が低下しますが、成層圏では逆の現象が起こります。

成層圏の温度特性

成層圏下部では、気温は約-56℃前後ですが、高度約15km付近まで上昇し、その後は成層圏界面付近までの間に温度が急上昇します。この現象は、成層圏内のオゾン層によるもので、オゾンが太陽の紫外線を吸収することにより熱が生成されるためです。オゾン濃度が最も高いのは通常20-25kmの高さですが、実際に気温が最も高いのは50km付近です。これは、高いオゾン層がより多くの紫外線を吸収できるためで、さらに上層では空気密度が低いために温度が急上昇します。

大気の安定性と混合

成層圏という名称が示すように、一般的には安定した層であると考えられますが、実際には完全な静止層ではなく、上下の混合が起こります。1902年にフランスの気象学者ティスラン・ド・ボールが気球観測により成層圏の存在を確認しました。彼は、対流圏とは異なり、成層圏の下部は低温で、上部は高温であることを発表しました。そのため、成層圏は「成層である」と考えられるようになったのです。

成層圏内の風

成層圏内では風の分布にも独特の特徴があります。成層圏の下部では対流圏の偏西風の影響を受けて西風が吹いており、成層圏の上部では、太陽の影響で高緯度の夏には高圧状態が形成されます。これにより、高低圧差が生じ、気圧傾度力が発生します。夏には東風が主に吹き、これを成層圏偏東風と呼びます。冬には逆に低圧の状態になり、高圧側から低圧側への気流が生じ、成層圏偏西風が形成されます。これらは季節によって変化する現象であり、成層圏のモンスーンとも言えます。

成層圏の研究歴史

1890年代末にドールは、無人気球を用いた観測により高層で温度が上昇する傾向を最初に発見しました。彼の観測によって、恒常的な温度層が存在することが認識されました。また、同時期にドイツのアスマンも高層気象観測を進め、この知見を補強しました。彼らの発見により、地球の大気構造に関する理解が深まり、現在の成層圏の概念に結びつく重要な成果となりました。

成層圏の研究は、地球の大気のみならず、海洋や陸の構造的理解にも寄与しており、科学の進展に大きな影響を与えています。

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