ブルーギル

ブルーギル：生態系に影響を与える北米原産の淡水魚

ブルーギル(学名: Lepomis macrochirus)は、サンフィッシュ科に属する北アメリカ大陸原産の淡水魚です。その鮮やかな体色と繁殖力の高さから、観賞魚としても注目されましたが、現在では特定外来生物として、日本各地の生態系に大きな影響を与えていることが懸念されています。

ブルーギルの特徴

成魚は体長約25cmに達し、最大で40cm程に成長します。若い個体は細長い体型に7～10本の暗色横帯を持ちますが、成長とともに体高が高くなり、体色は濃灰褐色から暗褐色へと変化し、横帯は不明瞭になります。体高が高く、側面から見ると円形に近い体型が特徴です。背鰭は棘条部と軟条部がつながり、口は小さく、口内には細かい歯が並んでいます。胸鰭は小さく遊泳力は弱めですが、背鰭、腹鰭、尻鰭は発達しており、体の向きを巧みに変えることができます。体色は変異に富みますが、一般的に若い個体は淡い青緑褐色で、成魚になると青紫色を帯びます。腹面は黄色みを帯び、オスは胸部が赤く染まる個体もいます。鰓蓋の後端にある紺色の部分から英名「Bluegill」が付けられました。

ブルーギルの生態

ブルーギルは湖沼、ため池、河川など、流れの緩やかな水草帯を好み、水質汚濁にも比較的強い性質を持っています。雑食性ですが動物食性が強く、昆虫類、植物、魚類、貝類、動物性プランクトンなどを捕食し、特に他の魚類の卵を好んで食べます。繁殖期は春から夏で、オスは巣を作り、メスを呼び込んで産卵します。産卵後もオスは卵の保護を行います。

日本への移入と外来種問題

日本への移入は1960年代に遡り、皇太子明仁親王（後の上皇陛下）がアメリカから持ち帰った個体が水産試験場に寄贈されたことがきっかけとされています。その後、食用や釣り目的での放流が繰り返され、日本各地に分布を広げました。

ブルーギルは高い繁殖力、環境適応力、卵と稚魚の親による保護などから、短期間で個体数を増やすことができ、在来魚類の生息を脅かす存在となっています。餌となる生物を競合したり、在来魚の卵や稚魚を捕食するなど、生態系への悪影響は深刻です。

ブルーギルの駆除

ブルーギルは特定外来生物に指定されており、各地で駆除が行われています。駆除方法は、成魚の捕獲（網、電気ショッカー、減水など）、卵の孵化阻害（産卵床の撤去、減水など）など多岐に渡ります。近年は、ゲノム編集による不妊化個体の放流なども研究されています。しかし、不妊個体の死亡までの期間における生態系への影響も懸念されています。ウグイや底棲巻き貝類がブルーギルの卵や稚魚を捕食する可能性も示唆されており、生物的防除策の可能性も探られています。釣り上げたブルーギルの再放流は禁止されており、持ち帰る、もしくは回収ボックスに捨てることが推奨されています。

ブルーギルの利用

ブルーギルは食用、観賞魚として利用された歴史がありますが、外来生物法により、新たな飼育は禁止されています。食用としては、フライやムニエルなど油を使った調理法が適しており、中国では養殖もされています。釣り対象としては、初心者でも容易に釣れることから、レクリエーションとしても親しまれています。ただし、その生態系への影響を考慮すると、再放流は厳禁です。

まとめ

ブルーギルは、その魅力的な見た目とは裏腹に、日本の生態系に深刻な影響を与える外来種です。その繁殖力と環境適応力、そして在来種への影響を理解し、適切な駆除と対策を進めることが重要です。個人の意識と行政による取り組みの両面から、生態系の保全に努めていく必要があります。

もう一度検索