ブルー・ジェミニ

ブルー・ジェミニ（Blue Gemini）は、1960年代初頭にアメリカ合衆国で構想された、軍事目的の有人宇宙飛行計画です。これは、当時進行していたNASAのジェミニ計画を拡張・発展させる形で検討されましたが、最終的には構想段階で中止されています。

アメリカ空軍は、宇宙空間を独自の判断で軍事的に利用することに強い関心を持っており、1962年に入ると、そのための具体的な有人宇宙計画の検討を本格化させました。その中で浮上したのが、NASAが既に開発を進めていたジェミニ宇宙船を空軍独自のミッションに活用するというアイデアです。

1962年8月、「ブルー・ジェミニ」と名付けられた計画案が提案されました。この計画は、空軍主導のミッションとして、宇宙空間での様々な軍事任務を想定していました。主な内容としては、軌道上でのランデブー技術の習得と応用が挙げられます。特に、敵国の人工衛星に接近し、その活動を偵察することを目的としたランデブー能力の開発が重視されました。

さらに、宇宙飛行士が船外活動を行う際に、操作可能な有人機動ユニットを使用する計画も含まれていました。この船外活動は、大型のレーダー装置を用いた精密な地表捜索を目的としており、地上の特定のエリアに関する詳細な情報を宇宙から収集する能力を目指していました。また、任務の内容に応じて、観測機材などをより多く搭載するため、乗員を1名に減らして打ち上げる単独飛行の可能性も検討されていました。ブルー・ジェミニ計画では、こうした任務を遂行するため、宇宙空間で最大14日間にわたって活動を継続する能力を持つことが想定されていました。

同時期、アメリカ空軍は、軍事的な運用を目的とした宇宙ステーションである有人軌道展開システム（MODS）の構想も進めていました。ブルー・ジェミニ計画は、このMODS計画を実現するための技術開発、特に軌道上での活動能力や船外活動技術を確立するための初期段階としての役割も担うものと位置づけられていました。

しかし、ブルー・ジェミニ計画は、その実現に多額の費用がかかることが予測されました。加えて、計画で想定されていた軌道上ランデブーや船外活動といった多くの技術開発・試験が、既にNASAによって推進されていたジェミニ計画の中でも実施される予定であり、技術開発における重複が多い状況でした。こうした経済的な負担と開発の重複という問題が指摘され、当時のアメリカ合衆国国防長官であったロバート・マクナマラは、1963年1月にブルー・ジェミニ計画の中止を決定しました。同時期に、関連するMODS計画も中止されています。

なお、ブルー・ジェミニ計画の中止から約1年後の1963年12月には、タイタン3ロケットとジェミニB宇宙船を用いる新しい有人宇宙飛行計画である有人軌道実験室（MOL）計画がアメリカ政府によって承認されています。MOL計画も空軍主導の軍事計画でしたが、使用されるジェミニB宇宙船は、ブルー・ジェミニ計画とは異なる経緯で開発されたものであり、直接的な関連性はありません。名称が似ているため混同されることがありますが、両者は明確に区別されるべき計画です。

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