ブルー・タートルの夢

スティングのアルバム『ブルー・タートルの夢(The Dream of the Blue Turtles)』は、ポリスの活動休止を経て1985年に発表されました。

この作品は、スティングの音楽的な才能が、ジャズやクラシックといったジャンルにおいていかに発揮されるかを明確に示すものとなっています。ポリスという枠組みから離れ、より多様な音楽性を追求しようとする彼の強い意志が感じられます。

アルバムには、冷戦を批判した「ラシアンズ」や、「チルドレンズ・クルセイド」、「黒い傷あと」など、社会や政治に対するメッセージを強く打ち出した楽曲が収録されています。これらの曲は、スティングが単なるポップミュージシャンではなく、社会的な問題にも積極的に関心を寄せていることを示しています。

一方で、ソロとしての最初のヒット曲となった「セット・ゼム・フリー (If You Love Somebody Set Them Free)」や、ポリス時代の楽曲「シャドウズ・イン・ザ・レイン」（アルバム『ゼニヤッタ・モンダッタ』収録）をジャズ風にアレンジしたバージョンも収録されており、彼の音楽的なルーツと新たな方向性が共存していることがわかります。

特に注目すべきは、ジャズ界の大御所たちがこのアルバムに参加している点です。彼らの参加によって、アルバム全体の音楽的な深みが増し、スティングの新たな音楽性を引き出すことに貢献しています。また、ポリス時代には主にベースを演奏していたスティングが、このアルバムではギターを演奏していることも特徴的です。ベースは、ダリル・ジョーンズが担当しています。

収録曲

1. セット・ゼム・フリー - If You Love Somebody Set Them Free - 4:14
2. ラヴ・イズ・ザ・セヴンス・ウェイヴ - Love Is the Seventh Wave - 3:30
3. ラシアンズ - Russians 3:57
4. チルドレンズ・クルセイド - Children's Crusade - 5:00
5. シャドウズ・イン・ザ・レイン - Shadows in the Rain - 4:56
6. 黒い傷あと - We Work the Black Seam - 5:40
7. コンシダー・ミー・ゴーン - Consider Me Gone - 4:21
8. ブルー・タートルの夢 - The Dream of the Blue Turtles - 1:15
9. バーボン・ストリートの月 - Moon Over Bourbon Street - 3:59
10. フォートレス・アラウンド・ユア・ハート - Fortress Around Your Heart - 4:48

これらの楽曲のミュージックビデオは、元10ccのメンバーであり映像作家であるゴドレイ&クレームが監督を務めました。特に、「セット・ゼム・フリー (If You Love Somebody Set Them Free)」のビデオは傑作として高く評価されています。また、アルバムの制作過程や並行して行われたツアーの様子を記録したメイキングビデオも制作されており、ファンにとっては貴重な資料となっています。

参加ミュージシャン

オマー・ハキム - ドラム
ダリル・ジョーンズ - ベースギター
ケニー・カークランド - キーボード
ブランフォード・マルサリス - サクソフォーン

『ブルー・タートルの夢』は、スティングのソロキャリアにおける重要な作品であり、彼の音楽的な多様性と社会的な意識を反映した、聴きごたえのあるアルバムです。

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