ブレイズメス1990

海堂尊による「ブレイズメス1990」は、彼のシリーズ「桜宮サーガ」の一環として展開されている長編小説です。作品は、2009年9月から2010年4月まで『小説現代』に連載され、その後タイトルが改められ、2010年7月に単行本が刊行されました。また、2012年には講談社文庫版も登場し、多くの読者に親しまれています。

この物語は、前作『ブラックペアン1988』の続編として位置付けられており、主人公である世良雅志が研修医としての成長を遂げる姿が描かれています。物語は1990年、東城大学医学部付属病院を舞台に、天才心臓外科医・天城雪彦との出会いを通じて生まれる数々の波乱を描写しています。天城はその特異な手術法と傲慢な性格により、周囲に不安をもたらす存在です。この作品は「バブル三部作」の第2作目としても知られています。

物語の冒頭では、世良は国際学会に参加するためにニースに向かいます。彼には院長の佐伯から、天城に重要なメッセージを届けるという特命が託されていました。しかし、天城は学会を忽然とキャンセルし、世良はカジノでの彼の行動を追って、その裏に潜む真実に迫っていきます。天城は、一種の拝金主義に基づき、自身の手術を受けさせるために患者にギャンブルを強いるという衝撃的な手法を用いています。このことは東城大学医学部全体に大きな影響を及ぼしかねないものでした。

世良は天城の魅力的な手技に惹かれながらも、彼を説得するために自らもギャンブルに挑むことに。ここから彼の成長が始まり、天城との関係は新たな局面を迎えます。その後、天城は東城大学へと招聘され、心臓手術専門の病院「スリジエ・ハートセンター」の設立に向けて動き出します。新たな病院の設立は、すでにある医療体制に変革をもたらす一方で、医師達の間に緊張を生むこととなります。特に高階という医師は、天城が持ち込む変革に対して反発を示すものの、次第に彼の実力に圧倒されることになります。

本作では、天城の画期的な技術「ダイレクト・アナストモーシス」が重要なテーマにもなっています。この手術は、従来のバイパス手術と異なり、詰まった血管を直接取り除いて新しい血管に置き換える方法です。しかし、高度な専門技術を要するため、世界中で天城だけがこの技術を体得しています。そして、彼が東京国際学会で自らの技術を公開することが宣言され、物語は緊迫感を増していきます。

登場人物は各々が個性的で、世良を始めとする外科医たち、天城に対して嫉妬や恐怖を抱く医局関係者、それを取り巻く看護師たちまで、様々な人間模様が描かれています。特に、世良は天城に深く関わりつつも、彼自身がどのような医師になりたいのか常に問い続ける姿勢が印象的です。

この小説は2014年7月からTBS系日曜劇場にて『ブラックペアンシーズン2』としてドラマ化され、ファンに再びその魅力を享受させる機会となりました。海堂尊の作品における医療界の深刻な葛藤や倫理観、そして人間ドラマが詰まった作品として、多くの読者にここまで影響を与え続けています。

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