ブレイド式チェーン駆動弁装置

ブレイド式チェーン駆動弁装置の概要

ブレイド式チェーン駆動弁装置は、第二次世界大戦中にオリバー・ブレイドによって設計された、蒸気機関車向けの革新的な弁装置です。この技術はイギリスのサザン鉄道に特有のものであり、基本的には自動車における効率性と最小限の保守性を重視した設計思想に基づいています。特に、ブレイドは自身のパシフィック形蒸気機関車にこの装置を採用することを目的としていました。

動作原理

この弁装置の中心的な機構は、三気筒エンジンを駆動するための設計によるものです。オリバー・ブレイドは、その設計した機関車が持つ三つの動軸のうち、第二軸を効率的に駆動する方法を模索しました。しかし、彼が直面した課題は、従来の弁装置が占有する空間を確保できないという点にありました。そのため、ブレイドはよりコンパクトなワルシャート式弁装置を新たに設計することを決定しました。

この新しい弁装置は、三連チェーンを使用した駆動機構を持ち、従来の内側弁装置と異なる形態で機能します。具体的には、三連クランク軸を用いて動力を得ることで、連動するバルブヘッドを操作する仕組みになっています。外側給気式ピストンバルブは、各シリンダーに対して二つのバルブヘッドが装備され、これを動かすためのロッキングシャフトが設けられています。

この機構には、蒸気が漏れない構造や、メンテナンス要件を最低限に抑える設計が反映されています。特に、運転中の給油を不要にし、長距離走行が可能であるとされていた点は、技術的な成功として評価されていました。

問題点

しかし、実際にはこの装置には多くの問題が存在しました。最も顕著な問題は、オイル槽の溶接不良による亀裂や、密封不完全による油洩れ、さらには水蒸気による腐食でした。その結果、機関車は想定以上のトラブルに見舞われ、火災の危険性は増す一方でした。

さらに、バルブタイミングが予測できない状況を生み出し、その根本的な原因としてはチェーンの伸びが疑われました。実際には、レバーの幾何学的な比率の設計ミスが大きく影響しており、これによって正確なバルブの動きが妨げられることになりました。

特に、イーストレイ式の蒸気逆転器が不安定な動作をすることで、機関車の性能全体に悪影響を及ぼすことが明らかになりました。例えば、逆転器が誤って全速前進に設定されると、バルブが頻繁に設計範囲を超えることがあり、これにより石炭の過剰消費や高速空転のリスクが生じる結果となりました。

このような複合的な問題に直面した結果、最終的には従来の三組のワルシャート式弁装置に戻ることが決定され、ブレイド式の採用は撤回されることになりました。

まとめ

ブレイド式チェーン駆動弁装置は、技術的には高い理想を抱いていたものの、実際には多くの設計上の欠陥が明らかになりました。この革新は、蒸気機関車における新しい可能性を示唆していたものの、実用化には至らなかったのです。

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