ブレナヴォン

ウェールズの世界遺産都市：ブレナヴォンの歴史と現在

ブレナヴォンは、ウェールズ南東部のポンティプール北方にある、人口約6000人の町です。アフォン・ルイド川の上流域に位置し、その歴史は1788年に始まった製鉄業に深く関わっています。製鉄業とそれに伴う炭鉱の隆盛によって、ブレナヴォンは急速に発展し、人口は一時2万人を超えるほどに賑わいました。しかし、1900年の製鉄業の終焉、そして1980年の炭鉱閉山によって、町は衰退期を迎えます。現在では、失業率の高さと高齢化が深刻な社会問題となっています。

産業遺産と観光

ブレナヴォンの産業遺産は、その歴史的価値からユネスコの世界遺産に登録されています。登録基準は、「現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠」と「人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例」の2点です。

世界遺産登録地には、ブレナヴォン製鉄所跡や、ヨーロッパ産業遺産の道アンカーポイントにもなっているビッグ・ピット国立石炭博物館が含まれます。ビッグピットでは、閉山後の1983年から坑道探検ツアーが実施され、かつての炭鉱夫の生活を体験できます。イギリス最大級の観光用坑道として人気を博しており、町の経済に貢献していますが、雇用創出効果は当初の期待ほどには及んでいないのが現状です。その他、ポンティプール・ブレナヴォン鉄道や、歴史的な山々にある古い作業場群なども観光名所として知られています。

古書店街構想とコミュニティ活動

炭鉱閉山後の衰退に対処するため、ブレナヴォンではヘイ＝オン＝ワイに次ぐウェールズの古書店街を目指した取り組みが行われています。しかし、地理的な立地の不利などから、観光客誘致という点では必ずしも成功しているとは言えません。それでも、町の大通りはかつての姿から大きく変わり、残った古書店では質の高い稀覯本が取り扱われています。

町の活性化には、地元住民の関与が不可欠です。フューチャー・ブレナヴォンなど、活気のあるコミュニティ・グループが数多く存在し、コミュニティ・ガーデンの整備など、町づくりの様々な活動に取り組んでいます。

タイム・チームの発掘調査

イギリスのテレビ番組『タイム・チーム』は2001年、ブレナヴォンで「失われた高架橋」の発掘調査を行いました。この高架橋は、1790年に建造された世界最初の鉄道高架橋の一つと考えられており、鉱石を積んだ荷車を馬が牽引していました。番組では、記録が残っていないにも関わらず、地中に埋もれたまま残っている可能性を探りました。3日間の調査の結果、最終日になって高架橋の一部が発見され、今後の本格的な発掘調査への期待が高まっています。

ブレナヴォンの未来

ブレナヴォンは、産業遺産という貴重な財産を持ちながら、人口減少や高齢化といった課題に直面しています。しかし、世界遺産登録、観光産業、活発なコミュニティ活動など、町の将来を明るくする要素も数多く存在します。古書店街構想や、タイム・チームの発掘調査で明らかになった高架橋の発見など、新たな観光資源の開発も期待されます。ブレナヴォンの未来は、これらの取り組みがどのように発展していくかにかかっていると言えるでしょう。

もう一度検索